ヒト唾液由来のexosome様の細胞外小胞(Exo)は、口腔内細菌の成分(LPS)、免疫活性化因子として(ジペプチジルペプチダーゼIV;DPP IV)を含有する。本研究はExoによる免疫活性化機構を解明し、歯周病菌等に対する自家ワクチンとなりうるかを検討することが目的である。 昨年度までに本ExoのLPS結合タンパク質を同定し、マクロファージ(Mφ)からNO産生を抑制させているタンパク質(LBPs)を見いだしたので、LBPsのExoとの結合状態を検討した。本ExoをリクロマトグラフィーするとExo本体と外層に分離されるが、LPSおよびLBPsはExo本体と同時に溶出したことから、LBPsはExo本体と相互作用していると考えられた。Exo本体によるMφの活性化はリクロマトグラフィー前と差はなく、外層による活性化は増強された。以上のことから、本ExoのLBPsはLPSによるMφ活性化を抑制すること、本Exo外層に含有されるLPSはExoから解離するとMφと接触しやすくなり、活性化が増強されたと考えられた。 本Exoの消化管内での安定性の検討では、外層のmucin5Bなどのタンパク質は消化酵素により容易に消化されるが、Exo本体は消化酵素に耐性であり、DPP IVもその分子量および酵素活性が保たれていた。以上を考え合わせると、今後はExo本体のDPP IVと外層に由来する解離後のLPSによる免疫活性化を検討する必要がある。本Exoは口腔内から食道までは外来抗原の吸着により、免疫系の過剰な活性化を抑制しているが、強力な消化酵素の存在する消化管内では外層が消化されてLPSが解離することにより、Exo本体との免疫活性化に寄与する可能性がある。
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