研究課題/領域番号 |
20K07163
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
伝田 香里 順天堂大学, 医学部, 特任助教 (00313122)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖鎖 / レクチン / 免疫応答調節機構 |
研究実績の概要 |
「糖鎖に着目することで初めて気づくユニークな免疫応答調節機構」が、タンパク質に付加されたO-結合型糖鎖を、樹状細胞亜集団及びこれに発現するレクチンが認識に関わることで免疫応答を調節すると仮定し、この機構を明らかにすることを目的としている。具体的には、O-結合型糖鎖として最もシンプルなN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)にフォーカスし、抗原提示細胞に発現するGalNAcを認識するレクチンであるマウスマクロファージガラクトース型C型レクチン(MGL1またはMGL2)の関与を明らかにするとともに、免疫応答調節機構の詳細を明らかにすることをめざす。 令和5年度は、糖鎖なし又は糖鎖付き抗原免疫後のT細胞応答への影響の解析の一環として、骨髄細胞由来樹状細胞を用い、in vitroで糖鎖なし又は糖鎖付き抗原を取り込ませたあとの抗原提示能を解析した。抗原特異的なT細胞としてMUC1タンデムリピートペプチドの部分配列に特異的なT細胞ハイブリドーマVF5を使用し、抗原を取り込ませた樹状細胞とVF5を共培養した後、培養上清中のIL-2濃度を測定することで、樹状細胞が抗原提示を行ったかどうか検出できる実験系を用いた。その結果、糖鎖なしの抗原を取り込んだ樹状細胞は、VF5からのIL-2産生を誘導したのに対して、糖鎖付き抗原を取り込んだ樹状細胞はVF5からのIL-2産生を誘導しなかった。マウスに免疫した場合には糖鎖付き抗原を免疫すると効率的なIgGクラスの抗体応答が誘導される。また、VF5は、糖鎖のないMUC1ペプチドに特異的である。これらの2点を合わせて考えると、糖鎖付き抗原を取り込んだ樹状細胞が抗原を提示していないとは考えにくく、糖鎖付き抗原は樹状細胞内でプロセシングを受けたあとも、糖鎖が付加した状態で抗原提示をされている可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、多数のマウスを使用せずにできる研究を遂行することで研究を推進したが、当初の計画では、ノックアウトマウスを用いた実験を行うことを予定していた。しかしながら、限られたスペース内で複数系統のマウスの繁殖、維持、実験を行っているため、各系統について繁殖に使用できるペア数が限られたうえに、妊娠する割合が予想よりも少なかったり、喰殺等が発生してしまったことで、実験に十分な匹数が確保できないことが続いてしまった。また、2系統のマウスを比較して実験に使用する計画のため、同時に行った繁殖の結果、実験に使用できる個体の雌雄がマッチしないなどの思いがけない事態が連続して生じたため、思うように実験を行うことができず、当初の予定より進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度には、引き続き少数のマウスでも実行できる計画、あるいは野生型マウスのみでも実行できる計画を優先して進める。また、ノックアウトマウスの繁殖については、現在飼育中の系統のうち本研究で必要な2系統を優先して繁殖させ、繁殖ペア数も増やし、繁殖中の観察を減らすなどして極力ストレスを低減させ、実験に必要な個体を確実に得ることで、マウスマクロファージガラクトース型C型レクチン(MGL1またはMGL2)による糖鎖付き抗原に対する免疫応答調節機構を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画には、まとまった匹数のノックアウトマウスが必要であるが、繁殖を行うためのスペースが限られており、また、予想外に繁殖が進まなかったため、予定していたよりも研究ペースに遅れが生じているため次年度使用額が生じている。次年度についても、引き続き、マウスの購入、動物施設利用料および消耗品購入に使用する計画である。
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