研究課題/領域番号 |
20K07164
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
山崎 浩史 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (30191274)
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研究分担者 |
清水 万紀子 昭和薬科大学, 薬学部, 准教授 (90307075)
村山 典惠 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90219949)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不活性化 / フラフィリン / クマリン |
研究実績の概要 |
世界各国で利用が推奨される定量的薬物相互作用検討用のガイダンス/ガイドラインでは、被作用薬の薬物代謝に関与する各代謝酵素の寄与率 (fraction metabolized) の実験的見積りが、臨床血中曝露推移予測に重要な要因となることが指摘されている。チトクロム P450(P450)分子種の被作用薬のin vitro 薬物酸化での寄与率は、選択する実験条件等によって、種々影響を受ける。食品由来成分クマリンは、ラットで殺鼠剤として利用される肝毒性を示す一方、ヒトに対する毒性については明確ではない。クマリンの代謝活性体であるクマリン3,4-エポキシド(o-ヒドロキシフェニル酢酸の形成速度で判定)および尿排泄可能な7-ヒドロキシクマリンへの酸化的代謝のバランスを調べた。事前にヒト肝細胞を移植した免疫不全マウスに、P450 1A2の代謝的不活化を目的として、フラフィリン15 mg/kg を前投与し、ヒトチトクロムP450 1A2酵素を生体内にて不活化したヒト肝細胞移植モデルマウスを確立した。本投与条件にて、指標薬物として選択したクマリン3,4-エポキシ化を介するさらなら代謝物生成が、in vitroとinvitro環境にて、ほぼ同程度の抑制をもたらすことが観察された。すなわち、選択的阻害剤処理により、クマリンの代謝活性化反応へのヒトP450 1A2酵素の役割がヒト肝細胞を移植した免疫不全マウス個体レベルでも確認された。以上、P450 1A2酵素の生体内不活性化の事例をもとに、本研究が目指す他P450分子種の生体内での代謝物由来の不活化を行う基盤情報が得られた。本知見はヒトでの食品成分クマリンのリスク評価の基盤情報となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型肺炎対策のため、東京都下の私立薬科大学では実験研究へ大いなる制約が発生した。しかし、最小限の実験化学手法をうまく組み合わせ、概ね当初計画どおりに取り組み、一定の成果を上げたと評価できる。 当初、海外研究者との直接の交流を通じて、研究発展の機会とする計画であった。しかし、新型肺炎対策にて本年度は対面での海外発表機会を得ることが出来なかった。一方、研究成果としては上記成果を誌上発表することができた。これらを勘案し、2年目は概ね順調に研究が進展したと総括する。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、ヒト肝主要P450 1A2と2C9酵素の外来物質による代謝的不活化に成功した。次年度は、残る主要酵素であるP450 3A4の生体内での不活化に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍でのオンライン化により、当初計上した国際学会出張経費等が繰り越しとなった。
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