研究課題/領域番号 |
20K07165
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
白坂 善之 金沢大学, 薬学系, 准教授 (60453833)
|
研究分担者 |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 薬物動態学 / 経口吸収 / 消化管 / 水分 / モデリング&シミュレーション |
研究実績の概要 |
従来の薬物吸収性予測手法は、その迅速性と簡便性のために、実際の消化管生理環境を簡略化し過ぎており、近年の複雑構造を有する医薬品候補化合物の吸収性予測に明らかな脆弱性をもたらしている。例えば、薬物吸収過程を規定する膜透過速度やトランスポーター/代謝酵素活性はいずれも消化管内における薬物濃度に依存するが、その吸収動態を考える上で、生理学的な消化管内水分環境が適切に考慮されることはほとんどない。したがって、薬物吸収動態を高精度に予測するためには、消化管内における薬物挙動だけでなく、生理学的な水分調節機構を統合理解することが重要である。そこで本研究課題では「消化管内水分挙動を考慮した高精度な薬物吸収動態予測システム」の確立を目指して、消化管水分調節機構の定量的解明とその変動因子 (飲食物、病態、薬物毒性など)の影響に対する定量的解析を試みた。 本年度(令和2年度)では、主に消化管水分調節機構の定量解析を目的として、まず、非吸収性FD-4および標識水 ([3H]water)を用い、ラット空腸、回腸および大腸によるin situ実験を行い、水分吸収性/分泌性の消化管部位特性に関する速度論解析を試みた。非吸収性マーカーであるFD-4を用い、ラット消化管内水分量の経時的変化に関する検討を試みた。その結果、消化管内水分残存率は、いずれの部位においても時間依存的に減少し、空腸および回腸に比べ大腸において早い水分吸収が観察された。また、これらの水分残存率は経時的な減少傾向を示し、一定時間経過後は緩やかな水分消失あるいは見掛け上定常状態に達した可能性が示唆された。一方、ラット消化管内における溶液浸透圧を経時的に観察したところ、浸透圧変化と水分吸収過程との間に一定の関係がある可能性が見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(令和2年度)では、主に消化管水分調節機構の定量解析を目的として、まず、非吸収性FD-4を用い、ラット空腸、回腸および大腸によるin situ実験を行い、水分吸収性/分泌性の消化管部位特性に関する速度論解析を試みた。 本検討に対してはおおむね順調に進展してはいるものの、一部の消化管部位(胃および十二指腸)の検討が完了していない。また、得られた結果に対する速度論解も完了には至っておらず、結果の再現性も含め、次年度以降で、消化管水分調節(吸収性/分泌性)の定量解析を、引き続き行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、令和2年度での検討の中で未完の項目を引き続き行う。特に、一部の消化管部位(胃および十二指腸)の検討や、得られた結果に対する速度論解を遂行し、消化管水分調節(吸収性/分泌性)の定量解析を試みる。 また、それらの結果に基づいて、消化管内水分量に及ぼす溶液浸透圧の影響や消化管内薬物濃度に及ぼす溶液浸透圧の影響、さらには、薬物の消化管吸収動態に及ぼす溶液浸透圧ならびに水分挙動の影響を定量解析する。 また、進捗状況に応じて、消化管水分調節機構の分子解明に取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度での検討はおおむね順調に進展はしたものの、コロナ禍の影響もあり、当該年度内で遂行しきれていない検討項目が生じた。これに伴い、次年度へと繰越す研究計画内容として、次年度使用額が生じるに至った。主に物品費として使用予定。
|