研究課題
本研究は、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害発症機序の解明とその機序を抑制する分子標的薬による治療法を見出すことを目指している。令和2年度は、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害機構について解析を行い、抗がん剤投与14日目においてマウス脊髄後根神経節及び腰椎において遺伝子発現解析を行い、神経伝達に関与する数種の因子の発現増加を認めた。また、これら因子が脊髄後根神経節及び腰椎の初代培養系においてオキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ添加時に発現増加するか検討したところ、発現増加が認められた。さらに、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ添加時におけるシグナル伝達経路活性化について解析を行ったところ、こちらにおいても数種のシグナル伝達因子の活性化が認められた。今後は、これらシグナル伝達経路の阻害剤(分子標的薬)を用いて、発現増加が認められた神経伝達因子が抑制されるか、初代培養系により評価し、さらにin vivoにおいて、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害を抑制するか検討を進めていく予定である。以上のことから、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害は活性化したシグナル伝達因子により神経伝達因子の発現増加を誘導し、発症している可能性が考えられた。今後は、シグナル伝達経路阻害剤(分子標的薬)によりオキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害抑制効果を検討するとともに、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害機序の全解明を目指し、検討を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度において、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害において、脊髄後根神経節、腰椎及びこれらの初代培養系において数種の神経伝達に関わる因子が増加していることを明らかにした。さらに、これらの神経伝達因子の発現増加は数種のシグナル伝達経路因子活性化が関与する可能性を認めている。以上のことから、研究計画通り、おおむね順調に進行していると考える。
令和3年度はオキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害発症機構の解明を引き続き進める。また、令和2年度において、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる投与時において、初代培養系にて数種のシグナル伝達因子の活性化を認めている。このことから、令和3年度ではこのシグナル伝達因子阻害剤(分子標的薬)により初代培養系でオキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ添加時に神経伝達因子の発現を抑制するか検討するとともに、in vivoにおいて分子標的薬により末梢神経障害を抑制できるか検討を進めていく予定である。これらの成果が得られれば順次、論文投稿や学会発表を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
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