研究課題/領域番号 |
20K07168
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
椿 正寛 近畿大学, 薬学部, 准教授 (30434856)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗がん剤誘発末梢神経障害 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害発症機序の解明とその機序を抑制する分子標的薬による治療法を見出すことを目指している。令和3年度は、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害機構について初代培養系を用いて解析を行い、令和2年度で同定した数種のシグナル因子の阻害剤(分子標的薬)にて、この活性化を抑制し末梢神経障害に関わる受容体の発現を抑制することを明らかにした。また、これらシグナル因子のsiRNAを用いて確認したところ、こちらにおいても受容体発現を抑制することを見出した。これらのことから、分子標的薬により末梢神経障害を抑制できる可能性を見出した。さらに、in vivoにおいて、分子標的薬の投与により、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害を抑制するか検討をし、例数は少ないものの抗がん剤による末梢神経障害を抑制できる可能性を見出している。 以上のことから、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害は活性化したシグナル伝達因子により神経伝達因子の発現増加を誘導し、発症している可能性が考えられた。今後は、シグナル伝達経路阻害剤(分子標的薬)によりオキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害抑制効果を検討するとともに、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害機序の全解明を目指し、検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度において、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害において、初代培養系において数種の神経伝達に関わる因子の阻害剤およびsiRNAにより末梢神経障害に関わる受容体発現を抑制することを見出している。また、例数は少ないもののin vivoにおいて分子標的薬が抗がん剤誘発末梢神経障害を抑制できる可能性を認めている。 以上のことから、研究計画通り、おおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度はオキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる末梢神経障害発症機構の解明を引き続き進める。また、令和3年度において、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブによる投与時において、初代培養系にてシグナル因子の阻害剤により末梢神経障害に関わる受容体の発現を抑制することを見出している。このことから、令和4年度ではこのシグナル伝達因子阻害剤(分子標的薬)によりin vivoにおいて分子標的薬により末梢神経障害を抑制できるか検討を進めていく予定である。 これらの成果が得られれば順次、論文投稿や学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:令和3年度の研究計画では、必要な実験試薬及び実験動物の購入を行った。しかし、研究を遂行する中で新型コロナウイルスの影響や他の業務などにより、検討が若干進められなかったことが挙げられる。また、令和3年度での研究費を令和4度に充て、令和4度に精力的に研究を進め、論文投稿できるまで成果を挙げる予定である。 使用計画:令和4度では、令和3度及び令和4度の研究費をマウスの購入費に充てる。オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害発症メカニズムを解明する上で、マウスの購入費用は必須である。また、オキサリプラチン、パクリタキセル及びボルテゾミブ誘発末梢神経障害発症機序に関与する因子を明らかにするため、抗体などを購入する予定であるため、これらについても執行しなかった研究費を充て、研究課題を遂行する。
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