研究実績の概要 |
高齢者に頻発する糖尿病や認知症等の疾患に対する有効な予防・治療法の開発が求められている。この対策として栄養介入による効果を期待するものが数多く報告され、これは生体内のエネルギー源の重要性を示唆するものである。最近エネルギー源として認知されてきた乳酸やピルビン酸とこれらを輸送するヒトモノカルボン酸輸送担体(hMCT)は、上記疾患と関連することが示唆されている。しかしながらhMCTの機能および生体内の役割については未だ不明な点が多い。そこで本研究ではhMCTの中でもhMCT2, 11に着目し、その機能とヒトにおける役割を明らかにすることを目的とした。これまで2型糖尿病患者を対象としたhMCT11遺伝子多型に関する臨床研究ならびにhMCT11一過性発現細胞を用いた基礎的検討から、hMCT11が糖代謝と関連することを見出した。一方、hMCT2においてアフリカツメガエル卵母細胞にhMCT2とその補助タンパク質であるembiginを共発現させることにより、hMCT2を介した乳酸輸送を評価できる系を確立した。今年度はこれらの関与が示唆されている肝由来細胞およびニューロン由来細胞を用いて乳酸輸送を解析するとともに、hMCTの寄与について検証した。肝由来細胞としてヒト肝がん由来細胞株HepG2、Huh-7細胞を、ニューロン由来細胞としてヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を分化させて用いた。その結果、肝由来細胞における乳酸輸送には、hMCT1とhMCT4が寄与することが示唆された。現在、分化SH-SY5Y細胞においてhMCTの発現ならびに乳酸輸送解析を実施しており、hMCT2の関与について検証中である。
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