研究課題/領域番号 |
20K07174
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石崎 純子 金沢大学, 薬学系, 教授 (60401890)
|
研究分担者 |
山田 正仁 金沢大学, 医学系, 教授 (80191336)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 高齢者 / ポリファーマシー / 認知機能 / フレイル |
研究実績の概要 |
本研究では、健常高齢者を含む高齢者集団を対象として、レセプト情報や処方情報はなく、面談より収集した薬物療法に関する情報と、認知機能や身体機能との関連を調べる。これによって、高齢者に対する薬物療法適正化による認知機能の低下や身体機能の低下(フレイル)の予防・改善に関する仮説を得る。さらに、この仮説に基づく臨床試験の実施により、薬剤師による薬物療法への介入が、認知機能の低下やフレイルを予防・改善できるかを明らかにすることを目的とする。 これまでに、地域高齢者を対象としたコホート研究(中島町研究)で収集した身体機能(握力、歩行速度、体重減少など)より、フレイルの評価を行った。「フレイル」および「プレフレイル」と判定された群(以下、フレイル群)と健常群とに分けて、フレイルに関連する背景因子は何かを統計解析学的手法を用いて調べた。 その結果、対象者(2017年度、全407名、年齢73.7 ± 6.5歳、男性45.7%)は、フレイル33名(8.1%)、プレフレイル192名(47.2%)、健常者182名(44.7%)に分類された。フレイル群では健常群に比べて使用薬剤数が有意に多いことが分かった。この他の有意な背景因子は、年齢、性別、一人暮らしか否か、教育年数、飲酒習慣の有無、認知機能であった。これらの背景因子を組み込んだ統計解析(多変量解析)の結果、フレイル群では、薬剤数が多いこと以外に、アドヒアランス不良者が多いこと、一方、血圧治療薬や脂質異常症治療薬の未使用例が多いことが分かった。 以上のことより、フレイルの予防・改善に対して薬剤師は、減薬の可能性を常に持って処方箋と向き合うこと、しかし、薬物療法が必要な患者には理解を促す指導をする必要があることが示された。 今後は、コホート研究の調査年度の範囲を拡げて解析することで、より信頼性の高い仮説を得て、臨床試験を立案・実践していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度前~中期は、コロナ禍の影響で大学への登学禁止、および、その状況下での教育活動の優先(遠隔授業の実施や教材作成など)のため、研究活動が大幅に制限されたため。
|
今後の研究の推進方策 |
中島町研究は5年間で全対象住民を調査し、それを1クールとして繰り返している。2021年度は、直近1クール分(2016~2020年度)の調査結果より、薬物療法と認知機能や身体機能との関連を調べることで、より信頼性の高い仮説を得る。 前向き臨床試験について、当初、健康サポート薬局や地域住民の健康維持に積極的にかかわる薬剤師の職能を社会にアピールすることも視野に、薬局の催し物として健康フェアを開催しその中でフレイル評価の実施を計画していた。しかし、コロナ禍においてはその実現は難しいと判断した。このため、臨床試験の対象を、来局者ではなく、在宅患者とする、これに伴い、フレイルではなく、オーラルフレイルの関連する口腔乾燥度を評価する。口腔乾燥は抗コリン薬の副作用とも関連すること、また、抗コリン薬の使用と認知機能との関連も報告されていることから、前向き臨床研究により、薬物療法と口腔乾燥度や認知機能との関連を評価することは、薬剤師のポリファーマシーへの介入手段を構築する上で有用と考える。
|