研究課題/領域番号 |
20K07176
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
檜垣 和孝 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (60284080)
|
研究分担者 |
丸山 正人 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (00399445)
大河原 賢一 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30291470)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | セロトニン代謝異常 / Cephalexin / gastrointestinal transit / 滞留性 / PEPT2 / 刷子縁膜 / Western blot / 尿細管再吸収 |
研究実績の概要 |
申請者らは、これまでに5-HT代謝異常ラットにおいて、i) Cephalexin (CEX) の経口投与後の吸収が増大すること, ii)CEXの吸収の一翼を担うPEPT1の小腸における発現は、粘膜ホモジネート中では変化が認められなかったが、小腸上皮細胞刷子縁膜上のPEPT1は有意に減少しており、PEPT1を介した膜透過はむしろ低下していること、iii)細胞間隙経路を介した受動拡散による膜透過が増大し、特に回腸において有意な増大となっていること、等を明らかにしてきた。本年度は、5-HT代謝異常ラットにおけるgastrointestinal transitの変動の可能性を検討し、前年までに明らかにした膜透過性変動との関係から、経口投与後の吸収性変動について考察を試みた。難水溶性色素phenol redをマーカーとして胃排出挙動を、また微小なガラスビーズをマーカーとして小腸内移行性を評価したところ、胃、十二指腸、空腸上部では、それぞれの消化管部位における移行性が亢進傾向にあること、一方で、空腸下部、回腸上部、回腸下部では、逆に移行性の低下、即ち滞留性が増大傾向にあることが明らかとなった。これは、CEXの透過亢進が起こっている回腸において滞留性が増大していることを意味しており、このことが経口投与後のCEX吸収増大を促したものと考えられた。また、CEXを5-HT代謝異常ラットに静脈内投与し、吸収過程以外の過程におけるCEXの動態変動の可能性を検討した。その結果、分布や血漿中からの初期の消失には、変動は認められなかったが、血漿中からの消失相における消失が、有意に遅延していることが明らかとなった。CEXは、腎臓の近位尿細管に存在しているPEPT2により再吸収されていることが知られていることから、腎の刷子縁膜上に発現しているPEPT2をWestern blot法により定量的に評価した。その結果、有意な減少が認められたことから、PEPT2を介した再吸収の低下が、血漿中からの消失の遅延の要因の一つと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も、計画に従い、5-HTとclorgylineを前投与することで作製した5-HT代謝異常ラットにおいて、消化管内の移行性の低下がcephalexinの経口吸収増大の一因となっていること、また静脈内投与後の消失相において見られた消失の遅延が、cephalexinの腎尿細管からの再吸収に寄与しているPEPT2の腎臓の刷子縁膜上の発現タンパク量の有意な低下によることを見出した。これにより、5-HT代謝異常時のCEXの吸収および体内動態変動について、明らかにすることができたと考えており、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、作製した5-HT代謝異常ラットを用い、様々な臓器に発現しており、種々の塩基性薬物の対外排出に寄与しているP-glycoproteinの基質として知られているquinidineをモデル薬物として、その吸収、膜透過、体内動態に及ぼす影響について検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究は、概ね、計画に従い進んでいる。既に取得済みの機器や試薬を利用することで、かなりをカバーできたため、次年度以降の研究に充てることとした。 次年度は、作製した5-HT代謝異常ラットを用い、P-glycoproteinの基質となることが知られているquinidineの吸収、及び体内動態に及ぼす影響について詳細を検討していく予定である。
|