研究課題/領域番号 |
20K07176
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
檜垣 和孝 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (60284080)
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研究分担者 |
丸山 正人 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (00399445)
大河原 賢一 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30291470)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | セロトニン代謝異常 / P-glycoprotein / Quinidine / α1-acid glycoprotein / 血漿蛋白結合 / 分布容積 / 腸神経細胞 / 共培養系 |
研究実績の概要 |
申請者らは、これまでにセロトニン(5-HT)に着目し、5-HT過剰状態を生み出す5-HT代謝異常ラットを用いて種々の検討を行ってきた。本年度は、引き続き5-HT代謝異常ラットを用い、5-HT過剰状態のP-glycoprotein(P-gp)活性に及ぼす影響の検討を試みた。P-gpの基質quinidine(QND)の経口投与後の血漿中濃度AUCは正常ラットの1.31倍となり吸収増大の可能性が考えられたが、静脈内投与後のAUCも正常ラットの1.37倍、CLtotalは0.73倍であることが明らかとなった。この結果を利用しQNDのBAを算出したところ、正常ラットで26.9%、5-HT代謝異常ラットで25.7%となり、QNDの経口吸収性には差異が無いことが明らかとなった。単離空腸粘膜を用いて、QNDの分泌方向の輸送を評価したところ、正常ラットとの間に有意な差は見られなかった。5-HT過剰ラットでは、小腸上皮細胞間のtight junctionが開口するので、paracellular routeを介した透過の増大の可能性が考えられるところだが、QNDは適度な脂溶性を有しており、主としてtranscellular routeを介して膜透過することから、tight junction開口の影響をほとんど受けないと考えられるため、QNDのP-gpを介した膜透過には変化が無いものと考えられた。一方、QNDの血漿中非蛋白結合率を評価したところ、5-HT代謝異常ラットでは、正常ラットの1.6~1.8倍であることが明らかとなった。そこで、塩基性薬物の血漿中蛋白結合を担うα1-acid glycoproteinをWestern blot法により定量的に評価したところ、5-HT代謝異常ラットの血漿中には、正常ラットの1.6倍のα1-acid glycoproteinが存在していることが明らかとなり、このことが有意な分布容積、CLtotalの低下に結び付いたものと考えられた。また、マウス腸管より単離した神経堤幹細胞様細胞を分化させて得た神経細胞とCaco-2細胞との共培養系を確立し、神経細胞の共存がCaco-2細胞単層膜のtight junctionを優位に開口させることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も、計画に従い、5-HTとclorgylineを前投与することで作製した5-HT代謝異常ラットを用いて、塩基性薬物を消化管管腔中に分泌することで、吸収を抑制的に制御することの知られているP-gpに及ぼす5-HT過剰の影響の評価を試みた。P-gp機能については変動はないものと思われたが、血漿中のα1-acid glycoproteinの発現増大が明らかとなるなどの新知見を得ることができ、おおむね順調に進展していると考えている。また、新たな試みとして、腸神経細胞とCaco-2細胞の共培養系の確立にも成功しており、本課題遂行の一助となるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、セロトニン過剰の及ぼす薬物吸収への影響を検討する予定である。特に、来年度は、セロトニン過剰状態を可能とするvitro系の確立を目指し、種々、検討する予定である。また、神経細胞-Caco-2細胞共培養系についても詳細な検討を加え、神経細胞と腸上皮細胞との関連性についての情報収集を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は、概ね、計画通りに進んでいる。既に取得済みの機器や試薬を利用することで、かなりをカバーできたため、次年度以降の研究に充てることとした。次年度は、5-HT代謝異常を再現可能とするin vitro系の構築と、同系を利用した細胞レベルでの検討を進めていく予定である。
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