研究課題/領域番号 |
20K07180
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀行 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (70739242)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 吸入製剤 / ナノ粒子 / 機能性ポリマー / プリンタ技術 / 経肺 DDS |
研究実績の概要 |
本研究は,抗体,タンパク,ペプチド及び核酸医薬品等,近年極めて重要性が高くなっているが注射等の侵襲的投与経路以外に有効な投与経路が存在していないバイオ医薬品に対する有効かつ安全な新規経肺 DDS 製剤の戦略的開発を目的とする.粉末吸入製剤は,バイオ医薬品の新たな投与形態として期待されるが,肺内における複雑な異物排除機構のため,吸入した微粒子の肺内における粒子動態や薬物動態は未だ不明な点が多く,肺からの薬物吸収制御を極めて困難なものとしている.本研究課題では,最新のナノテクノロジーとイメージング技術を駆使し,肺内における微粒子動態および薬物動態を制御可能な革新的経肺 DDS プラットフォームの開発に挑戦するものである. 具体的には,下記の課題を解決すべく鋭意検討を行っている (2021 年度の研究概要). ① 機能性高分子を用いて作成した粘液透過性・付着性を有する薬物封入ナノキャリアへの薬物封入効率の改善および物理化学的特性評価(粒子形態,粒度分布,薬物封入率,分散安定性等). ② 呼吸器内の部位特異的な粒子送達を実現する吸入用微粒子開発:ナノ粒子搭載型の吸入用微粒子調製条件の最適化および吸入特性評価(粒子形態,粒度分布,カスケードインパクターによる吸入特性評価,保存安定性試験等). ③ バイオイメージングによる機能性ナノキャリア搭載吸入剤の肺内粒子動態解析:選定した蛍光プローブのナノキャリア中への封入効率改善および粒子物性評価.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階で予定していた 2021 年度中における検討項目については概ね順調に進捗しており,処方最適化よおび調製条件の改善を指向した検討ならびに作成したナノキャリアの物性評価,吸入用微粒子化検討を行うことができた.また,作成した機能性ナノ粒子について,狙った特性,すなわち粘液付着性および粘液透過性が付与されていることを人工粘液を使用した分散特性評価から確認できた.今後,ナノ粒子の形態,薬物放出特性等,より詳細な物理化学的特性評価と併行してラットを使用した in vivo 試験についても効率的に進めて行きたい.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究活動によって,薬物のキャリアとなるナノ粒子の処方設計,物理化学的特性評価の大筋を完了できており,現在,申請者らグループが開発した粒子設計技術である fine droplet drying 工法によってナノ粒子搭載型吸入用微粒子設計について鋭意検討中である.吸入設計製剤設計において,粉体特性は吸入特性を決定する重要な因子となるため,最適化検討と物性評価を効果的に実行することで高い吸入効率を有するナノ粒子搭載型吸入用微粒子設計を遂行する.また,吸入用微粒子の肺内挙動を正確に把握するため,前年度までに選定した蛍光プローブ (P2) を封入したナノキャリアを使用したバイオイメージング実験についても併行して実施していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響のため,予定していた国内・国外学会への出張旅費分の使用に関してずれが生じた.翌年度繰り越し分に関しては,現在,吸入用微粒子設計の検討で想定していたよりも使用する機能性ポリマーのロスが大きい (粒子の回収率が低い) ため,その部分を補填するための費用として使用していく予定である.
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