本課題研究は,バイオ医薬品,特に近年着目される中分子医薬品をターゲットとした新規投与形態として,有効かつ安全な経肺 DDS 製剤の戦略的開発を目的とする.粉末吸入製剤は,経口投与による適用が困難な中分子医薬品の新たな投与形態として期待される.肺内における薬物分解酵素活性の低さ,豊富な毛細血管網,肺胞領域における上皮細胞層の薄さが未だ効率的な DDS の存在していない中分子医薬に適した投与経路であると考えられている.しかしながら,肺内における複雑な異物排除機構のため,吸入した微粒子の肺内における粒子動態や薬物動態は未だ不明な点が多く,肺からの薬物吸収制御を極めて困難なものとしている.本研究課題では,最新のナノテクノロジーとイメージング技術を駆使し,肺内における微粒子動態および薬物動態を制御可能な革新的経肺 DDS プラットフォームの開発に挑戦するものである.2021 年度の検討では蛍光物質を封入した機能性ナノ粒子の開発に成功しており,2022 年度はその物性評価と一部の in vivo における評価を行ってきた.本年度は,下記に示す課題を解決すべく鋭意検討を行った (2023 年度の研究概要). ① In vivo imaging system を用いたナノ粒子の粘膜中拡散性の新規評価方法の確立 これまでにも人工粘液を使用した粘液透過性ナノ粒子の評価系を用いてナノ粒子の物性を明らかとしてきたが,粘液中の粒子拡散動態についてより定量的な比較を行うため,IVIS を用いた新規評価系を構築した. ② LPS-induced acute lung injury モデルラットにおける粒子拡散動態評価 In vivo における粘液中の拡散動態を評価すべく,気道炎症による粘液産生亢進の知られる LPS を炎症惹起物質として用いたラット気道炎症モデルを構築,蛍光物質封入ナノ粒子製剤を経気道的の投与してその拡散特性を評価した.
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