医薬品の物理化学的安定性に関する情報は非常に限られている。患者の手元で保管される調剤薬は、その患者への処方に合わせて一包化されたり粉砕・混合されたりすることが多いため、これらの安定性情報の創出が望まれる。そこで迅速・簡便・高感度に酸化劣化を検出できる極微弱化学発光測定法の応用可能性を検討した。微弱化学発光測定法は、化合物の酸化で生じた過酸化物の分解物が励起状態から基底状態に戻る際に生じる発光を、フォトンレベルで検出する手法である。 アムロジピン、テルミサルタン、ワルファリン等の製剤(後発品、口腔内崩壊錠、散剤等を含む)をそれぞれセロポリ分包紙で分包し、遮光または露光条件下で室温保管した。保管後、分包紙を取り除き、化学発光(CL)測定装置 (東北電子産業(株)) で試料室温度150 ℃、窒素ガス導通下、測定開始から10分間、1分間毎の積算CL量を求めるとともに発光画像を得た。 (1)錠剤表面の露光による酸化状態の変化の検出:露光経時的にCLの増加が認められ、同じ露光時間では、遮光、室内散光、露光4000 lx の順にCL値が高かった。錠剤断面のCLを測定したところ、露光面側の表面に沿ってCLが認められた。(2) 製剤による光酸化の差異の検出:それぞれの製剤で露光によりCLが増加した。製剤によって露光によるCLの増加率に差異が認められ、光に対してそれぞれ異なる反応性を示すことが検出された。また、肉眼では変色が認められなくてもCLの増加が認められたことから、極微弱化学発光測定法は光酸化による調剤薬の劣化を鋭敏に評価できるものと推察される。酸化され易さを画像として確認できるメリットがあり、同主成分製剤間の安定性の違いの評価にも応用できるものと考えられる。種々の条件や剤形など今後さらに検討を行う価値がある。 以上の結果は別記のとおり学会発表したほか、論文投稿を行った。
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