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2021 年度 実施状況報告書

中枢におけるNa依存性クエン酸トランスポーターの生理的役割と病態に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K07190
研究機関立命館大学

研究代表者

藤田 卓也  立命館大学, 薬学部, 教授 (00247785)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードNa依存性ジ・トリカルボン酸トランスポーター / 中枢移行性評価 / 血液脳関門(BBB)
研究実績の概要

本研究課題では、中枢神経系の発達・分化とNa依存性ジ・トリカルボン酸輸送系(NaCs)との関連を細胞生物学的、生化学的手法を用いて明らかにすることを第1の目的とする。さらにNaCsの中でもクエン酸に親和性の高い輸送系NaC2の輸送に関してげっ歯類とヒトを含む類人猿とに明確な種差が存在し、げっ歯類の NaC2 を介した Na+ 依存的な基質輸送は Li+ により著しい阻害を受けるのに対し、ヒト NaC2 を介した Na+ 依存的な基質輸送は Li+ により逆に著しく促進されることが報告されている。中枢神経系における神経伝達物資の合成や神経活動に必要なエネルギー供給機構の解明は、認知症やてんかん等の神経疾患発症の原因の解明の一助となると考えられる。また、中枢神経系に発言しているNa依存性クエン酸トランスポーターは、現在でも患者の治療ニーズに十分にこたえられていない精神疾患治療薬の新たなターゲット分子となる可能性が示唆されている。Li+ は躁病治療薬として広く用いられている薬物であり、NaC2 が Li+ の新規ターゲット分子である可能性も十分考えられる。そこで、Li+やジ・トリカルボン酸の中枢移行性を評価するためのモデルとして、サル脳より調製した in vitro 毛細血管内皮細胞モデル(BBB)キットを利用することとし、今年度は本モデルの妥当性に関して検討を加えた。
サルの脳より調製された in vitro BBBキットは、ファーマコセル株式会社より購入したものを利用し、培養条件及びマーカー色素(ルシファイエロー:LY)とアンチピリンの透過性と膜抵抗値によりBBBキットのintegrity の確認を行った。本キットはBBBを介した中枢移行性を評価するに十分な膜抵抗値を有していることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス大脳皮質より調製した初代培養細胞を用いた検討に関しては、2021年度はCovid-19感染拡大下における研究施設の入構制限等の影響により、試験実施を進める大学院の研究室での実験が制限されたため、思ったほどの研究の進捗が認められなかった。
そこで、NaCを介したLi+やジ・トリカルボン酸の中枢移行性をin vitroで評価するための新規モデルとしてサルBBBキットを用いて、本キットの評価系としての利用の妥当性を検討した。その結果、このBBBキットがヒトでのLi+やジ・トリカルボン酸の中枢移行性を評価するためのin vitro評価系として利用できる可能性が示された。本キットはサル脳毛細血管内皮細胞をポリエチレンテレフタレート膜に単層培養するとともに、その反対側膜にペリサイト、24穴プレート底面にアストロサイトを播種した系で構築されており、ペリサイトとアストロサイトからの液性因子によりサポータされている新規BBBモデルである。この系が中枢移行性を評価するため、易透過性薬物であるアンチピリンと難透過性であるルシファイエロー(LY)をモデル化合物としてその透過性を検討するとともに膜抵抗値(TEER)を測定することでBBBキットのintegrityを検討したところ、1kΩ・cm2以上のTEERを示すとともにモデル化合物の透過性もこの値を反映したものであったことから、本キットがサルでの中枢移行性を評価するためのin vitro モデルとして妥当であることが示唆された。

今後の研究の推進方策

上述のように、NaC2とLi+との相互作用には明確な種差が存在し、げっ歯類のNaC2を介した Na+ 依存的な基質輸送はLi+により著しい阻害を受けるのに対し、ヒトNaC2を介した Na+依存的な基質輸送は Li+ により逆に著しく促進される。この結果は発現系で得られているが、ヒトニューロンにおけるNaC2の機能発現、あるいはLi+との相互作用を検討した報告はなされていない。そこで本研究では、まず NaCT を発現しているヒトニューロブラストーマのスクリーニングを行い、NaCT ポジティブな細胞株に対して、Na+ 依存的な[3H]succinate、[14C]citrate 輸送に対するLi+の影響を精査する。さらにLi+で細胞を長時間作用させた際の NaCT の発現変動、輸送活性変動に関しても検討を行うとともに、他の神経伝達物質受容体の発現・活性変動に関しても同様に検討することで、NaC2とこれら受容体発現の連関に関しても検討を加える。
さらにBBBにおけるLi+やジ・トリカルボン酸の輸送に関しても前年度で検討したin vitro BBBキットを用いて検討を進める。特にBBBにおけるNaCsの発現解析に関しても詳細に検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Prediction of oral drug absorption in rats from in vitro data.2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Akiyama, Naoya Matsumura, Asami Ono, Shun Hayashi, Satoko Funaki, Naomi Tamura, Takahiro Kimoto, Maiko Jiko, Yuka Haruna, Akiko Sarashina, Masahiro Ishida, Kotaro Nishiyama, Masahiro Fushimi, Yukiko Kojima, Takuya Fujita and Kiyohiko Sugano
    • 雑誌名

      Pharmaceutical Research

      巻: 39 ページ: in press

    • DOI

      10.1007/s11095-022-03173-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of P-glycoprotein inhibitors for evaluating the effect of P-glycoprotein on the intestinal absorption of drugs.2021

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Kono, Iichiro Kawahara, Kohei Shinozaki, Ikuo Nomura, Honoka Marutani, Akira Yamamoto and Takuya Fujita
    • 雑誌名

      Pharmaceutics

      巻: 13 ページ: 338

    • DOI

      10.3390/pharmaceutics13030388

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Indigo enhances wound healing activity of Caco-2 cells via activation of the aryl hydrocarbon receptor.2021

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Shimizu, Chisa Takagi, Toshinori Sawano, Yuto Eijima, Jin Nakatani, Takuya Fujita, and Hidekazu Tanaka
    • 雑誌名

      Journal of Natural Medicines

      巻: 75 ページ: 833-839

    • DOI

      10.1007/s11418-021-01524-y

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28  

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