クエン酸は、糖・脂質合成・代謝に必須の化合物であることから、肝臓における役割について注目を集めている。血液中から肝臓実質細胞内へのクエン酸の輸送は、Na+ 依存性クエン酸トランスポーター(SLC13A5 / NaCT)を介して行われている。これまでの報告により、SLC13A5 は肝細胞において脂質だけでなく糖代謝にも関与していることが示唆されている。一方で、SLC13A5 と2型糖尿病や脂肪肝などの疾患との関連性については未だ不明な点が多く存在することから、本研究では、肥満モデルマウスにSLC13A5阻害剤であるPF-06761281を投与し、SLC13A5の発現量や糖尿病の評価を比較検討することで、SLC13A5が代謝性疾患に対する治療のターゲットとなるのかを評価した。コントロールマウスと比較し、HFD投与 7 週での肥満モデルマウスでは約10 g、HFD投与 18 週 での肥満モデルマウスでは約20 gの体重差が確認できた。肝肥大は、18 weekでの肥満モデルマウスでのみ確認できた。SLC13A5の発現量はいずれの群のモデルマウスでも増加した。一方で、SLC13A5阻害剤であるPF-06761281を投与した肥満モデルマウスにおいて、血糖値の低下は確認できなかったが、肝臓における脂質蓄積、脂肪酸合成酵素の減少傾向が確認でき、インスリン抵抗性の改善傾向も併せて確認することができた。SLC13A5の発現量に有意な差はないことから、PF-06761281は、SLC13A5を介したクエン酸輸送を阻害することで、肝臓における脂質蓄積を抑制することが示唆された。今後、前年度の検討で得られている中枢でのSLC13A5のクエン酸輸送特性と、本年度に得られた肝臓におけるクエン酸輸送・生理作用を精査することで、SLC13A5をターゲットとした医薬品開発の基礎的情報を提供できると考える。
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