研究課題/領域番号 |
20K07191
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
内山 博雅 大阪医科薬科大学, 薬学部, 講師 (60792744)
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研究分担者 |
戸塚 裕一 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (50312963)
門田 和紀 大阪医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50709516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アモルファス / 経口吸収性改善 / 溶解性改善 / CYP / 中分子化合物 |
研究実績の概要 |
近年、難溶解性だけでなく難吸収性を示す医薬品候補化合物の増大に伴い、新薬開発の成功確率は低下している。コアモルファスとは、難溶解性薬物と低分子あるいは中分子化合物などの基剤の間で分子間相互作用を形成させ、両化合物を共にアモルファス状態へと変換する製剤手法である。本研究では、難溶解性かつ難吸収性を示す分子量500以上の中分子化合物に注視し、コアモルファス形成により、ターゲット化合物の溶解性および経口吸収性の改善が可能か検討した。 アゼルニジピンは難溶解性かつCYPの基質となることで難吸収性を示すが、CYPの阻害剤であるケトコナゾールやベルガプテンとともにコアモルファスを形成することで、経口吸収性が10倍以上に向上した。高い経口吸収性の改善は、① 両化合物がアモルファス状態となることで、消化管内での溶解性が向上した、② 溶解性が向上することで両化合物の受動拡散が促進された、③ 受動拡散の促進により、小腸上皮細胞を透過したアゼルニジピンおよびCYP阻害剤の量が増大し、小腸上皮細胞や肝臓内でのアゼルニジピンのCYPによる代謝阻害が回避できたことが要因と考えられた。アゼルニジピンに対しては今後、膜透過性やCYP阻害効果について検討し、In vitoroとIn vivoの相関性を検討していく。 近年、新たな医薬品候補化合物として、中分子量の環状ペプチドが報告されている。そこで環状ペプチドのモデル化合物としてシクロスポリンを用い、コアモルファス形成の検討を行った。スクリーニングで見出した組み合わせを製剤化したところ、顕著なシクロスポリンの溶解性改善は確認できなかった。シクロスポリンに対してのコアモルファス形成の可能性の探索を進めるために、調製時の有機溶媒や調製方法などを変更し検討を続けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難溶解性かつ難吸収性化合物であるアゼルニジピンに対して、CYP阻害剤をカウンター化合物としたコアモルファスが形成可能な組み合わせの探索に成功し、製剤化を実施した。コアモルファスを形成することでアゼルニジピンだけでなくカウンター化合物であるケトコナゾールやベルガプテンの溶解性改善に成功した。さらに動物試験において、アゼルニジピンの経口吸収性はコアモルファス形成により、10倍以上にまで増大することを確認した。一方で、アゼルニジピンの膜透過性の評価を並行人工膜透過性アッセイにより評価したところ、膜透過しないことが分かり、今後細胞を使用した透過性試験を立ち上げ評価を行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のコンセプトであった、①コアモルファス形成による両化合物の消化管内での溶解性改善、②溶解性改善による受動拡散の促進による膜透過量の増大および、③小腸や肝臓での代謝の回避による血中濃度の増大に関して、①および③に関しては、実証することができた。今後は②に焦点をあて、細胞実験を用いて、両化合物の膜透過性改善が可能であることを検証していく。また、アゼルニジピン以外の化合物としてシクロスポリンを用いて、シクロスポリンと化合物の間でコアモルファス形成が可能かを検討していくとともに、シクロスポリンの溶解性や吸収性改善が可能か検討していく。
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