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2021 年度 実施状況報告書

病態背景が経皮吸収型製剤の経皮アベイラビリティにおよぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 20K07195
研究機関金沢大学

研究代表者

嶋田 努  金沢大学, 附属病院, 准教授 (90409384)

研究分担者 槇原 弘子  横浜市立大学, 医学部, 講師 (00708696)
崔 吉道  金沢大学, 附属病院, 教授 (40262589)
大貝 和裕  金沢大学, AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター(保), 准教授 (40706983)
藤田 有美  金沢大学, 附属病院, 特任助教 (50876026)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード経皮吸収型製剤 / 個体差の要因 / 病態 / 皮膚バリア / 皮膚常在菌叢 / フェンタニル
研究実績の概要

経皮吸収型製剤は、超高齢社会を背景に安定した血中濃度の維持が可能なことなどから今後利用患者の増加が予測されている一方、実臨床ではその有効性や安全性に大きな個体差が生じている。そこで本研究課題では経皮吸収型製剤の個体差の要因を併存疾患との関連に着目し、臨床研究と基礎研究の両輪にて研究を進めている。
2020年度は臨床研究によりフェンタニル経皮吸収型製剤の個体差と併存疾患との関連性を検討したところ、糖尿病患者において有効性を示すまでの期間が明らかに短縮するなど各種併存病態がフェンタニル経皮吸収型製剤の有効性に影響をおよぼす可能性が示された。一方、臨床研究では患者背景に伴う様々なバイアスがあることから、2021年度は糖尿病モデル動物を用いて、病態とフェンタニル経皮吸収型製剤の有効性の関連性について、またその要因について、薬物動態学的観点、皮膚組織学的観点から解析を行った。糖尿病モデルGKラットおよびコントロールラットに対して、フェンタニルを静脈内投与及び経皮投与後の血中濃度推移を測定した結果、静脈内投与後はコントロール群とGKラット間では変化は認められなかったものの、経皮投与後は、GKラットにおいて投与後の血中濃度の立ち上がり(経皮吸収)が有意に速く、また投与後のフェンタニル経皮吸収型製剤における残留する薬物量が有意に低いことが示された。一方で、皮膚の組織学的変化として、GKラットの背部において明らかな過角化や表皮・真皮の肥厚、皮下脂肪の蓄積等皮膚組織の異変が確認できた。
今後は上記メカニズムの解明と、他の皮膚状態に影響を及ぼすモデル動物を用いて、各種病態とフェンタニル経皮吸収型製剤の個体差の要因として各種病態の関連性について多角的視点から検証を進めて行く。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は臨床研究と基礎研究の両面から経皮吸収型製剤の個体差と併存疾患との関連について検討を進めている。
臨床研究については計画当初よりも早期に成果を得ることが出来、現在論文を2つ執筆中である。また臨床研究から得られた結果より、基礎研究に繋がる新しい知見を多数得ることが出来た。
基礎研究では、臨床研究で顕著な変化が認められた糖尿病に着眼し、日本人に多い非肥満2型糖尿病モデルラットであるGKラットを用いて検証を進めてる。十分に高血糖を示した12-13週齢GKラットを用い、皮膚の組織学的変化を検証した結果、コントロールと比較し背部皮膚では過角化や表皮・真皮の肥厚、真皮層への皮下脂肪の蓄積が認められ、特異な皮膚症状を示した。一方で、大きく組織学的変化が認められた背部皮膚において経皮吸収型製剤の薬物動態を検証したかったが、過度な過角化により経皮吸収型製剤を適切に貼付できない可能性が想定されたので断念した。そこで表皮や真皮の肥厚や皮下脂肪の蓄積も少ないものの過角化が認められない腹側部皮膚を用いて経皮吸収製剤の薬物動態を検証した。その結果、コントロール群と比較し、GKラットにおいて投与後の血中濃度の立ち上がり(経皮吸収)が有意に速く、また投与後のフェンタニル経皮吸収型製剤における残留する薬物量が有意に低いことが示された。本結果は、臨床研究で認められた変化と同様な変化であった。一方でフェンタニルの静脈投与後の血中濃度推移についてはGKラットとコントロール間では差は認められなかったことから、GKラットの皮膚においてフェンタニル経皮吸収型製剤に対する動態学的要因が関与していることが示唆された。これら基礎研究も概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

2022年度は最終年度となるが、当初の計画通り研究を進めて行く予定である。
現在検証を進め、経皮吸収型製剤の薬物動態の変動が認められたGKラットについては、その要因を検証すべく、フランツ拡散セルシステムによる皮膚透過に与える影響、皮膚組織内のフェンタニル体内動態に影響を及ぼす代謝酵素やトランスポーターの発現変動、また研究分担者による皮膚バリア機能と組織学的変化、皮膚常在菌に及ぼす影響などを進めていく予定である。また既に検証を開始しているGKラットより重症な1型糖尿病症状を示すストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルや皮膚への影響が報告されている消化管潰瘍モデルについても、併存疾患による経皮吸収型製剤の吸収過程に与える影響について検証を進めて行く。

次年度使用額が生じた理由

一部の分担者で、配分額より少ない額で目標を達成しており、次年度への繰越金が発生している。
最終年度に当たる今年度予算に吸収させ、研究計画に従い適切に研究を進めて行く予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 2型糖尿病モデルGKラットにおける皮膚の構造とバリア機能パラメータの変化2022

    • 著者名/発表者名
      水野 智詞、槇原 弘子、藤田 有美、嶋田 努、赤瀬 智子、崔 吉道
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [備考] 金沢大学附属病院薬剤部のホームページ

    • URL

      https://pharmacy.w3.kanazawa-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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