研究課題/領域番号 |
20K07197
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
阿部 真治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (00403717)
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研究分担者 |
西岡 安彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (70274199)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗体療法 / ADCC / CasMab / ポドプラニン |
研究実績の概要 |
悪性胸膜中皮腫はアスベストにより誘発される難治性の胸部悪性腫瘍であり、治療法として外科的切除、化学療法、放射線療法などが行われているが、治療抵抗性であることが多いため、抗体療法などの新規治療法開発が求められている。これまでに我々の研究グループはポドプラニンを標的とする特異的抗体を開発し、その抗体が ADCC 活性の誘導を介して、悪性胸膜中皮腫細胞株に対して強い抗腫瘍効果を発現することを明らかにしている(J Immunol. 190:6239-6249, 2013; Cancer Sci. 107:1198-1205, 2016.)。一方で、ポドプラニンはリンパ管内皮細胞やⅠ型肺胞上皮細胞などの正常細胞にも発現することが知られており、ADCC を作用機序とする治療抗体では副作用発現が懸念される。本研究では、我々の研究グループが開発した、ポドプラニンのエピトープだけでなくがん細胞特異的な付加糖鎖の両方を認識することでがん細胞のみを選択的に認識するがん特異的抗体(CasMab)の有用性について検討することを目的としている。2021年度は、悪性胸膜中皮腫に対するがん特異的抗ポドプラニン抗体の細胞傷害活性についてin vitroの検討を行った。ポドプラニン陽性悪性胸膜中皮腫細胞株を用い、51Cr遊離試験法を用いて検討したところ、がん特異的抗ポドプラニン抗体は抗体依存性細胞障害(ADCC)活性を誘導することが認められた。この結果より、in vitroにおいてがん特異的抗ポドプラニン抗体は、がん細胞に対する有意な細胞障害を引き起こすことが明らかとなった。また、in vitroにおいてがん特異的抗ポドプラニン抗体の細胞障害活性が認められたため、in vivoでの抗腫瘍効果の検討に用いるマウスモデルの確立に向けた基礎的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画では、がん特異的抗ポドプラニン抗体の悪性胸膜中皮腫に対する細胞障害活性を評価するため、ヒト悪性胸膜中皮腫細胞とヒト単核球を用いて51Cr遊離試験法によるin vitroの検討を行うとともに、悪性胸膜中皮腫移植マウスモデルを用いてin vivoにおける検討を行う予定であった。51Cr遊離試験法によるin vitroの検討はほぼ予定通りに実施し、がん特異的抗ポドプラニン抗体によるADCC活性誘導を明らかにすることができた。また、in vivoにおける検討では、今後の抗腫瘍効果の検討を行うために必要な評価モデルの確立を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに悪性胸膜中皮腫に対するがん特異的抗ポドプラニン抗体の抗腫瘍効果については、in vitroでの検討が進んでおり、in vivoモデルを確立することができた。したがって、2022年度は、in vitroにおけるがん特異的抗ポドプラニン抗体の ADCC 活性についてさらに詳細な検討を進める予定である。また、悪性胸膜中皮腫移植マウスモデルを用い、in vivoにおけるがん特異的抗ポドプラニン抗体の抗腫瘍効果について検討を行う。現時点で本研究は順調に進捗しており、in vitroおよびin vivoの実験系をもちいて、着実に研究の進展を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)当初の2021年度の実験計画では悪性胸膜中皮腫に対するがん特異的抗ポドプラニン抗体の抗腫瘍効果についてin vitroおよびin vivoで検討する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により研究活動の制限があり、特に2020年度の段階で研究進捗が遅れていたため、次年度使用額が生じることとなった。 (使用計画)翌年度分として請求した研究費と合わせて、詳細なin vitroおよびin vivoの検討に使用する予定である。In vitroおよびin vivoの実験系は我々の研究グループで確立されており、研究の進展について技術的な部分での大きな障害は無いと考えられる。
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