LAPTM4βは様々な種類のがんに高発現していること、反対にLAPTM4βの発現を抑制すると化学療法に対する感受性が増すことが断片的に示唆されているが、LAPTM4βの細胞内輸送や局在との関連を含めて、包括的な解明には至っていない。 2020年度は、Eps15の発現がLAPTM4βのリソソームへの輸送に関与するか否かについての検討を行った。その結果、Eps15をノックダウンしたHeLa細胞において、LAPTM4βのTGNへの繋留が認められた。また、LAPTM4βのユビキチン化がEps15とLAPTM4βの相互作用に必要であることも示唆された。そのユビキチン化を担うのがHECT型E3リガーゼであるItchであることから、Itchによるユビキチン化がLAPTM4βの輸送シグナルとして寄与していることが明らかとなった。2021年度はLAPTM4βを一過性に高発現させた細胞において抗がん剤ドキソルビシンを曝露させた場合の細胞内あるいは核内への抗がん剤の取り込みについての検討を行った。その結果、他のLAPTMファミリータンパク質と比較して、LAPTM4βを発現させた細胞ではドキソルビシンの取り込み量が減少していた。この結果から、LAPTM4βが抗がん剤の取り込みを負に制御あるいは排出を正に制御している可能性が示唆された。2022年度は既存の抗がん剤排出機構との相関について検討を行なった。抗がん剤排出機構として最もメジャーなP-糖タンパク質(P-gp)の発現量はLAPTM4βの発現量の増減に変わらず、影響は見られなかった。P-gp阻害剤のベラパミル処理時に、LAPTM4β発現時のドキソルビシン取り込みの減少の抑制が認められた。この結果から、LAPTM4βがドキソルビシンを核内から隔離させる働きは、P-gpと共役した機序によるものであることが示唆された。
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