本研究の目的は、カチオン性多孔質PLGAマイクロ粒子を用いて、バイオ医薬品の徐放技術を構築することである。PLGAマイクロ粒子をコーティングするカチオン性ポリマーの量や乳化条件を最適化することにより、高品質なマイクロ粒子を再現よく製造することに成功した。まずは、バイオ医薬品のモデルとしてタンパク質の搭載に着手した。PLGAマイクロ粒子とタンパク質を混合するpHを考慮することで、アルブミンから免疫グロブリンといった様々な等電点のタンパク質を汎用的に搭載し、徐放できることを実証した。インフリキシマブ搭載PLGAマイクロ粒子は、50日にわたってインフリキシマブを徐放し、それらは薬理活性を保っていることを確認している。今年度はこれまでに構築してきたタンパク質徐放プラットフォームを他のバイオ医薬品に適応するべく、多孔質PLGAマイクロ粒子へ搭載可能なナノメディシンの作製と徐放製剤化への可能性を検討した。中でも細胞外小胞は、多様な生物活性をもつことが知られ、疾患治療への応用が期待されている一方で、作用は一時的であるため、徐放化が求められているバイオ医薬品候補のひとつである。そこで、培養細胞、果汁、乳汁などからモデル細胞外小胞(EVs)を単離し、PLGAマイクロ粒子への搭載を試みた。EVsがもつ負電荷を利用し、我々がこれまでに構築してきた静電的相互作用に基づいたPLGAマイクロ粒子への吸着を応用することで、ある程度PLGAマイクロ粒子へEVsが搭載されることが分かった。今後はEVsの放出性や、放出されたEVsの薬理効果について検討を進める。
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