難治性アトピー性皮膚炎患者に対して適正マイクロバイオームをクスリとして捉えて治療に資することが、本研究の目標である。 これまでに、本研究ではアトピー性皮膚炎増悪マイクロバイオームの皮膚免疫応答の評価系である三次元ケラチノサイトモデルを作製し、また、アトピー性皮膚炎患者由来の新規な増悪マイクロバイオームを発見してきた。皮膚には細菌と真菌といった界(Kingdom)を越えた微生物の集合体で存在している。そのため両者が相互作用していると考えることには合理性がある。増悪因子である細菌・黄色ブドウ球菌を培養細胞に感染させ、その後真菌・マラセチアを共存させると炎症性サイトカインの産生が抑制された。そのためマラセチアは常在菌でありながら炎症をノックダウンさせる潜在的能力があると考えた。その細胞成分を検証するために、マラセチア株の遺伝子欠損株の作製を試みた。Agrobacterium tumefaciens-mediated transformation (ATMT) を用いてマラセチアのゲノム内で相同組み換えを起こすことで形質転換体を作製した。 条件を至適した結果、Malassezia restrictaとMalassezia globosaの遺伝子欠損株の樹立に初めて成功した。この方法を用いることでマラセチアの菌体外分泌タンパク質、細胞構成成分やシグナル伝達系をコードする遺伝子を網羅的に欠損させた。遺伝子欠損株を用いて細胞培養系で評価したところ特定の成分が炎症応答に寄与していることが明らかになった。
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