吸入粉末剤の適用において、粒子の肺内移行率向上と肺疾患患者に対する治療薬剤の目的部位への送達は重要な課題である。そのためには、各患者に対して適切に肺内移行する吸入粉末剤を設計し、その薬剤を含んだ粒子が目的とする肺内部位へ適切に沈着することが求められる。 本年度は昨年度から引き続いて、製剤設計においては、親水性薬物および疎水性薬物を内包できる、シクロデキストリン金属有機構造体(CD-MOF)について検討した。前年度は、比較的水への溶解性が高い抗菌薬のレボフロキサシンについてその薬物含有量が高く、さらに肺内到達率も高い製剤設計に成功した。本年度は、疎水性薬物としてケトコナゾールを対象として噴霧乾燥法により設計した。噴霧乾燥条件を変化させることで、薬物の溶出特性が大幅に変わることが確認された。また、多糖類を添加剤として用いて、その噴霧乾燥前の溶液前駆体の条件によって作製される粒子形態が全く異なることについても確認した。特に、凍結噴霧乾燥法を用いた場合、溶液の粘度の違いが粒子形態に大きく影響を及ぼしていることが確認できた。現在、この形態違いのキャリア対して、ナノ粒子を含有させることができる製剤設計法の確立を目指している。 また、COPD患者についての肺内粒子挙動について引き続き検討した。特に、肺疾患では重症度が異なることで、肺構造が全く異なる。本年度は昨年度よりさらに対象例数を増やして、その重症度の違いによる肺内粒子挙動および肺での空気の流れについて解析した。
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