研究課題/領域番号 |
20K07214
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
櫨川 舞 福岡大学, 薬学部, 准教授 (10509186)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核酸 / PLGA / ペプチド / コンジュゲート / がん / 標的 |
研究実績の概要 |
核酸医薬は、がんをはじめとする多様な難治性疾患の治療薬となり得ることから、その実用化に大きな期待が寄せられている。しかしながら、酵素で容易に分解を受け、細胞膜を通過できない特徴から核酸の実用化にはドラッグデリバリーシステム(DDS)が必要不可欠である。本研究課題では、全身投与可能ながん転移治療薬開発を目指すため、効率的に細胞内に送達され活性成分が細胞質内に放出される製剤設計を行い、その治療効果についてマウスメラノーマ肺転移モデルを用いて検討することを目的とした。 2020年度よりペプチドに生分解性高分子乳酸・グリコール酸共重合体PLGAを結合させることで独自設計のコンジュゲートの合成に取り組み、これまでにペプチド-PLGAコンジュゲートと核酸-PLGAコンジュゲートを混合した混合ミセル製剤を調製し、がん細胞指向性核酸搭載ミセル製剤の設計を行ってきた。ペプチドのPLGAとのコンジュゲート化の利点として明らかになったことは、ペプチド-PLGAが細胞内透過性を高めたミセルを形成すること、ペプチドの配列設計によって標的細胞への指向性が制御できること、ミセル粒子の電荷を制御できることであり、すなわちペプチド自身に活性がある場合細胞内移行性の低いペプチドの活性を高めるペプチドデリバリーのためのナノキャリアになり得たことである。本年度は、本製剤の特徴であるペプチドで制御可能な粒子表面の電荷が体内分布に与える影響について、「in vivoでの体内分布」を分子イメージング装置を用いて評価した。その結果、局所投与の場合は正電荷の粒子が効率よく細胞内に移行すること、静脈内投与の場合は中性電荷の粒子が比較的がん細胞に集積しやすいこと、負電荷の粒子の場合は非特異的な細胞への送達が回避できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、「in vivoでの体内分布」を主に評価し、病態モデルマウスを用いたがん細胞への集積性について評価を行った。しかしながら、病態モデルマウスにおける、原発巣、転移巣の増殖抑制効果、すなわち治療効果については、他の業務とのバランスにより十分行えなかった。そのため、本製剤の病態モデルマウスを用いた治療効果については2023年度に繰り延べて実施する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2023年度)は本製剤の病態モデルマウスを用いたがんの原発巣および転移巣に関する治療効果について検証する。方法は、①マウスメラノーマ細胞を皮下に移植する自然転移モデルマウスと②ヌードマウスの皮下にヒト子宮頸がん細胞を移植するゼノグラフモデルの2種類を用いる。①のモデルを用いる目的は、原発巣、転移巣への治療効果が目視で評価できるメラノーマの特徴を生かして免疫不全ではない動物での薬効評価である。また、②のモデルを用いる目的は、よりヒトのがんに近いモデルでかつヌードマウスを用いることで蛍光標識した製剤とがん細胞の位置の観察が容易なモデルで製剤の体内分布と治療効果を同一個体で観察することである。本研究成果については、学会および学術論文等で成果報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本課題の加速化を目的とした国際共同研究のために海外で6か月間研究を行った。国内に滞在している6か月間に予定していた動物実験の一部が終了できなかった。そこで、がん病態モデルマウスにおける製剤の治療効果に関する評価について、次年度に繰り延べて実施し、その実験に使用する消耗品費として残額の40万円を使用する。
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