研究課題/領域番号 |
20K07219
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 康勝 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00614504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Muse細胞 / 幹細胞 / 免疫寛容 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
本研究では、最終目標としてMuse細胞の免疫拒絶回避機構を明らかにし、さらに免疫抑制剤を使用しない臓器移植法の開発への足掛かりを得ることを目的としている。 昨年度は免疫抑制に重要な役割を果たすとされるヒト白血球抗原G (human leukocyte antigen-G, HLA-G)がMuse細胞に与える影響について解析するために、HLA-G promoterの下流にGFPを導入したMuse細胞し、分子的な側面から解析を進めると同時にin vivoにおいて特定の条件下ではMuse細胞が免疫系細胞とインタラクションしている可能性を示唆する結果を得ることに成功した。 今年度はこれらの知見を基として同種Muse細胞の投与によってレシピエントの免疫系細胞の体内分布にどのような変化が起こるのかを検討した。具体的にはBALB/cマウスに四塩化炭素を投与して肝臓傷害モデルを誘導した。翌日C57BL/6マウス由来Muse細胞を静脈投与し、時間経過とともに免疫系組織におけるTh細胞、B細胞、CTL, 骨髄由来抑制細胞(MDSC), 制御性T細胞(Treg)の増減をFACSで解析した。その結果、コントロールと比較しMuse細胞の投与がなされると、リンパ節ではB細胞以外の細胞が3日目には増加していた。また、傷害臓器である肝臓ではCTL, ヘルパーT細胞、B細胞、Tregが7日目以降に顕著に増加していた。注目すべき点として、免疫抑制に関わるMDSCがMuse細胞投与によって骨髄から動員され、末梢血を介して胸腺や脾臓に集積すること、Tregが3日では骨髄内で増加し、7日で脾臓や傷害肝臓に集積することがわかった。胸腺でのTreg はMuse細胞投与でむしろ減少の傾向があった。 今後、これらの現象が免疫拒絶回避にどのように関わるのか解析を進め、今後のMuse細胞の新たな応用の可能性について検証を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
依然としてコロナ禍により試薬や物品の流通に遅れが見られ、また長期に渡る欠品などのトラブルに見舞われたものの、計画の見直しを必要とするほどの影響はなく研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には現在の計画をそのまま進めていく。昨年度に引きつづき未解決のままの懸念点として、本研究を進めるにあたり効果的と考えられるのは免疫抑制に非常に重要な役割を果たすとされるTregやMDSCを欠損させたマウスを用い、そこにMuse細胞を移植することであるが、いくつか報告されているTreg knockoutマウスはそのすべてが生後2週間程度で自己免疫疾患により死んでしまうため本研究には適さず、さらにはMDSCのknockoutマウスは報告されていない。そこで今後はMuse細胞がin vivoでどのように働くのかを機能的、分子的両側面から解析を進めていき、最終的に免疫拒絶を回避するメカニズムについて明らかにしていくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も引き続きコロナ禍の影響で、研究自体をはじめ試薬や機器の購入および納入に時間的制約を受けたため、当初予定していたよりも使用額が少なかった。加えて学会も依然として中止や延期が相次いだ。次年度にはこの問題が解消されることを見込んでおり、本年度と次年度合わせて当初の計画通りに進めていくことを計画している。
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