研究課題/領域番号 |
20K07223
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
篠田 友靖 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80505652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経系前駆細胞 / 脳発生 |
研究実績の概要 |
大脳原基を構成する主な細胞であり、かつ将来の成熟脳の興奮性神経細胞やアストロサイトを生み出す神経系前駆細胞は、脳膜から脳室面まで達する極めて細長い構造を有し、細胞体のほとんどを核が占めている。核は細胞周期に応じて細長い細胞の中を動くことがすでに判っており、細胞骨格とそのモータータンパクが核を「運ぶ」、もしくは周囲の細胞の細胞体(核)に「押されて動く」とされている。ところが申請者の先行研究で核に直接外力を加えた結果、予想外に核が動きにくいことが明らかになった。この結果から、申請者は核周囲の細胞膜自体が核の進行方向に流動しているのではないかと考え、細胞膜・核の物性の観点、および細胞膜の「流れ」という観点で、核を動かす「力」そのものに着目し前駆細胞の核運動の本質を問うことにした。本年度は核を取り囲む細胞膜の流動が実際に存在するのかどうかを検証した。 <1>前年度に手技を確立したマイクロインジェクション用のマイクロマニピュレーターを使って、顕微鏡観察下でキャピラリー先端の「筒部分」を神経系前駆細胞に押し当てて保持する方法を用いて、細胞核が「進む」力の値を計測した。キャピラリーをさらに改良した結果、誤差は多いながらも力の値を測定することに成功したと思われる。 <2>前駆細胞の細胞核を包むように存在する細胞膜の流動の有無を調べるために、細胞膜局在型GFPで標識した細胞膜をフェムト秒パルスレーザー照射で脱色し、核の進行方向と細胞膜の流動性の関係性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞核が細胞中を進むときの「力」が、当初想定してたものよりかなり小さく、測定条件の確立に時間を要した。 また、レーザー照射による蛍光標識細胞膜の脱色、脱色部位への蛍光の復活(FLAP)が予想外に細胞核の進行方向の前後での差が見られず、より精密な測定をする必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
力の大きさや蛍光標識の測定精度が、研究開始当初の予想よりも精密さが求められた。このため、既存の方法論ではなく自身で「計測方法」を確立することの重要性を再認識した。 また研究途上で、前駆細胞の細胞核の動体にどうやら脳室面の「硬さ」が大きく関与することが判ってきたので、脳室面の物性を担うメカニズムの解明も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを自前で繁殖し調達し、購入費用を抑制した。また、コロナウイルス蔓延に伴う学会のオンライン化で出張費用が減ったため、次年度利用が生じた。
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