研究実績の概要 |
自閉症は、社会性障害などを特徴とする発達障害群であり、脳の構造と機能の異常が基礎にあると考えられる。ヒトの遺伝学的解析や変異マウスの解析が始まっているが、その発症機序はよく分かっていない。最近、哺乳類のClk2が自閉症治療薬の創薬ターゲットになることが示され、Clk2キナーゼ経路の機能解析が早急に必要である。本研究では、Clk2キナーゼ経路の神経形成における役割を解析し、Clk2キナーゼ経路の破綻が脳形成異常を発症する機構を解明する。 前年度までに、Clk2と協調して神経形成を促進する遺伝子としてClk1とClk3を同定することに成功している。また、初期発生過程におけるClk1, Clk2, Clk3の機能阻害実験をおこなった結果、生体内では主にClk3とClk2が協調して神経形成を制御し、自閉症の発症に寄与する可能性が示唆された。今年度は、ヒトタンパク質相互作用解析データベースおよびツメガエル遺伝子発現データベースを用い、神経形成過程においてClk2/3に結合する可能性のあるタンパク質を探索した。ツメガエル初期胚cDNAを用いて遺伝子発現解析をおこなったところ、これらのClk2/3結合因子候補が初期発生過程で発現していることを確認した。 研究期間全体を通じて、Clk2に加えて、そのファミリーメンバーであるClk1とClk3が神経形成に働いていることを明らかにすることが出来た(2021年に論文発表)。また、最終年度にはClkファミリーと協調して機能することが期待されるClk2/3結合因子の候補を複数同定し、初期発生過程における発現解析に着手することが出来た。
|