現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近、GABAが神経細胞の活動電位を抑制するだけでなく、成体ラットにおいてグルタミン酸ニューロンに対するシナプスの選別や除去に関わる(Hayama et al,2013,Nature Neurosci.)ことや、発達期にシナプス形成に関わること(Chattpadhyaya B et al, 2007, Neuron)が明らかになってきた。さらに最近、発達期のI層GABAニューロンがバレル野の形成に関わること(Che A et al.,Neuron, 2018)が報告されたが、GABAニューロンの階層的な発達制御機構の詳細は未解であった。最近の予備的な実験で、生後初期から長期的にGABA放出停止を起こしたニューロンは、顕著に樹状突起が退縮することを発見した(2018解剖学会総会, 2018日本神経科学会大会)。この結果は、GABAを分泌する機能的な抑制性シナプスが回路形成や維持に必須であることを示唆している。令和2年度は、大脳皮質発生発達過程におけるVGAT欠損の影響を階層的に調べるために生後0日目のNkx2-1Cre; floxed-VGAT homo/hetero R26-TdTomatoマウスの大脳皮質の細胞を単離し、10x Chromium によるSingle-cell RNA-seq 解析を行った。単一細胞遺伝子発現プロファイルに含まれる大脳皮質層特異的発現遺伝子群によってクラスターを分類して、解析を行ったところ、VGAT欠損マウスではグルタミン酸ニューロン群だけでなく、GABAニューロン群の遺伝子発現プロファイルが大きく変化していた。分類したクラスター群には、NdnfやReelinを発現する大脳皮質I層GABAニューロンと考えられる細胞群も含まれているため、現在、詳細な解析を進めている。
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