研究課題/領域番号 |
20K07228
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
黒羽 一誠 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50580015)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / long non-cording RNA / 精子幹細胞 / 分化制御 |
研究実績の概要 |
精子幹細胞では、自己複製能を不可逆的に喪失し精子形成へ向けて運命決定される一時期において、大規模なゲノム修飾の変動が引き起こされる。この運命決定に関わる大規模なゲノム修飾の変化は、ゲノム修飾酵素(主にDNAメチル化酵素とヒストンメチル化酵素)の転写後レベルで起こる発現上昇に依存する。本研究は、ゲノム修飾酵素の発現上昇に関わる転写後制御機構を明らにすることを目的として、「翻訳制御」の可能性を中心に解析した。本研究の成果により、精子幹細胞の分化開始機構が明らかになるだけでなく、種の保存や、不妊症の原因解明とその治療への応用も期待される。 これまでに実施してきたRNA-sequencingのデータをストランド特異的に再解析した結果、D N Aメチル化酵素遺伝子の5’末端領域から、ゲノムブラウザであるUCSCなどに登録されていないAntisense long non-cording RNA (AS-lncRNA) が転写されていることを見出した。このAS-lncRNAの転写量は、DNAメチル化酵素量が上昇する時期と一致して、精子幹細胞から分化細胞への移行を境として大きく上昇していた。AS-lncRNAが、精子幹細胞の分化移行に伴う遺伝子発現変動に広く関わる可能性を検証するため、DNAメチル化酵素遺伝子と同様の傾向(分化細胞において、遺伝子の5’末端領域からAS-lncRNAを高発現し、かつ、センスmRNAの転写量に変化なし)の遺伝子を抽出した結果、この特徴を持つ遺伝子セットがクロマチン関連遺伝子に偏ることがわかった。さらに、これらクロマチン関連遺伝子の発現は、DNAメチル化酵素と同様に、分化細胞への移行を境としてタンパク質レベルで上昇していた。したがって、複数のクロマチン関連遺伝子が、AS-lncRNAを介して時期特異的な転写後レベルでの発現制御を受けていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、DNAメチル化酵素遺伝子の5’末端領域から転写されるAS-lncRNAをクローニングした。これをマウス精子幹細胞の試験管内培養系(GS細胞)に導入し、AS-lncRNAを過剰発現させた細胞株を取得した。この細胞株を解析した結果、AS-lncRNAの過剰発現がDNAメチル化酵素のタンパク質発現を誘導すること、また、その発現誘導がAS-lncRNAの長さに依存することを示す予備的知見が得られた。 同様に、複数のクロマチン関連遺伝子の5’末端領域から転写されるAS-lncRNAのクローニングを既に完了しており、GS細胞に導入予定である。
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今後の研究の推進方策 |
クローニングした各種AS-lncRNAをGS細胞に導入し、AS-lncRNAの過剰発現株を作成する。細胞株が取得でき次第、western blotとqRT-PCRで、対応するクロマチン関連因子の発現量の変化を解析する。クローニングしたAS-lncRNAの改変は容易であるので、変異型AS-lncRNAの作用を解析することで、AS-lncRNAを介した遺伝子発現制御の分子メカニズムに迫ることができると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 予期していなかった方向性で研究に進展があったため、実験計画を大きく変更したことが主な理由である。 使用計画: 繰越金は、進展のあった研究計画に使用する。主に、細胞培養とクローニングに関わる消耗品の購入を行う。また、現在進行中のSequence解析に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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