研究実績の概要 |
pcdマウスの運動失調は生後3週齢から始めり、6週齢になるとほぼすべてのプルキンエ細胞が脱落するが、顆粒細胞死は5週齢から7週齢の間にみられる(Wang T Brain Res., 2007)。Nna1は小脳のプルキンエ細胞にも顆粒細胞にも高発現している(FASEB J,2007)から、プルキンエ細胞(PC)と顆粒細胞(GC)特異的なcKOマウスを作製、解析した結果プルキンエ細胞死がNna1のけっしつによる自律的な死であることを明らかにし、遅れた顆粒細胞死がNna1の欠失による自立的な死であり、非自律的な死は主導的であることが解明した。Nna1は脱グルタミンさん酵素としても注目され、その機能の欠失は骨格蛋白tubulinのC-末端におけるグルタミン酸鎖の蓄積を誘発し、細胞骨格の変化によって死を引き起こす(Cell, 2010)。ただ、詳細的な分子メカニズムは細胞レベルでは分かっていない。我々の研究結果によって、P53がPCの変性に関わっていることが示唆されていた。したがって、Nna1;P53dKOマウスを作って、P53の関与について調べている。さらに、Nna1の機能損失によるプルキンエ細胞死は小脳の入力系の橋核と出力系の中脳、赤核におけるc-fosの上昇がみられたため、グルタミン酸受容体の興奮性毒性を考えた。それを抑えるために生後9日目から24日目までペランパネルを経口投与して効果を調べった結果、明らかな運動改善効果がみられなかったが、微弱なc-fos, Arcの抑える効果がみられた。今後バクロフェン(GABAアゴニスト)は脳定位注入し(小脳深部核、脳橋、中脳、赤核)、改善効果を評価する。
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