研究実績の概要 |
損傷した骨格筋が再生する過程において、筋衛星細胞が筋分化し筋芽細胞に変化したのち、筋芽細胞同士の融合を経て多核の筋細胞が形成される。この筋芽細胞融合現象の分子機序を明らかにし、筋再生を補助あるいは促進する薬剤シーズを探索する目的で、これまでに当研究室においてマウス筋芽細胞株C2C12細胞およびスプリットルシフェラーゼを用いて、新規細胞融合アッセイ系(HiMy法)を構築した(Isobe et al., 2022)。本系を用いて、様々な化合物スクリーニングを開始したところ、メバロノラクトンが細胞融合促進効果を示すことが示唆され、メバロノラクトンがコレステロールの生合成量を高めることで筋芽細胞融合を促進することが示唆された(論文準備中)。さらに、、約3,900種からなる既知薬理活性化合物ライブラリ(東京大学創薬機構)および、約400種類の酵素阻害剤ライブラリ(学術変革領域研究、先端モデル動物支援プラットフォーム、分子プロファイリング支援)を用い、より大規模な化合物スクリーニングを継続中である。ヒット化合物から筋分化に関わるメカニズムとして、cAMPによる調節機構が明らかとなりつつあるが、過去の他の報告とは異なった作用が示唆されることから、詳細な分子機序解析を行っている。 さらに、これまでに行ったRab small GTPaseの網羅的ノックダウンスクリーニングにより、新たにノックダウンにより筋芽細胞融合に促進的に効果をもたらすRabを見出しており、これらに関しても、CRISPR-cas9系を用いたゲノム編集技術によりノックアウト細胞を作成し、ノックアウト細胞をベースとしたHiMyアッセイ系を構築しつつある。これらの細胞を用いて、筋芽細胞融合、筋管形成の過程を詳細に検討するとともに、細胞融合に関わる分子の網羅的探索を行うことが可能になる。
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