研究課題/領域番号 |
20K07246
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小路 武彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30170179)
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研究分担者 |
柴田 恭明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (80253673)
末松 貴史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 技術職員 (70264249)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精原細胞 / 核小体 / DNAメチル化 / rRNA / In situ PCR / 5-azadC |
研究実績の概要 |
本研究では、精母細胞で減数分裂前期に残存する核小体周囲のヘテロクロマチンが染色体配置に重要な役割を果たすと考え、昨年度はマウス精母細胞核小体周囲での5-メチルシトシンの強陽性と5-ハイドロキシメチルシトシンの陰性を見いだすと共に、核小体に於けるPre-rRNA、18S rRNA、28S rRNA 及びspacer rRNA の電顕的局在証明を行った。 本年度は、遺伝子位置の同定方法として利用しているIn situ PCR 法の再検討並びに5-azadC 投与マウス精巣の解析を行った。In situ PCR については、特異性が低いことが課題であったが、前処理として0.1M クエン酸緩衝液 (pH 6.0)を用いたオートクレーブを行うこと、またTdT反応を用いてDNAの3’末端をジデオキシヌクレオチドでマスクすることにより、非特異的シグナルを顕著に減少させることができた。本プロトコールの有効性は、18S rDNA の精子形成細胞の核小体における局在によって証明した。その際、セルトリ細胞におけるrDNAが主として核小体のsatellite domain に局在することを見いだした。 5-azadC はDNMTに結合し、メチル化DNAを減少させる一方で細胞毒性を有する。5-azadC投与群精巣に5-hmC と5-mC 抗体を用いた二重染色及び超解像顕微鏡により三次元観察により、5-azadC投与群に於けるアポトーシス誘導がDNA脱メチル化作用によるものであることを再確認した。現在、精子形成細胞の核小体の変化を核小体マーカーであるnucleolin やfibrillarinの免疫染色、核小体ヘテロクロマチン分布の変化をDAPIで解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは昨年度の検討課題でもあった、パラフィン標本を用いた in situ PCR の条件を整えた点は評価できる。長らく問題視されてきたIn situ PCR におけるノイズの強さは、おそらく酵素処理によって露出した3’末端へのヌクレオチド付加が原因の1つであったと考える。本法は今後、Pgk遺伝子座のみならずDNA塩基配列の核内位置同定に寄与すると期待される。 また、In situ PCR の陽性対照として利用した18S rDNA primer で、予想外にsatellite domainに於いて18S rDNA部分の局在つまりrDNA遺伝子の存在が証明されたが、その意義については今後の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
正常及び5-azadC 投与両群に於けるnucleolin、fibrillarin、p53抗体を用いた免疫染色、18S 及び28S rRNAプローブを用いたISHを施行し、人為的DNA脱メチル化によって生じる核小体の形態や分子発現変化を検討する。一方でin situ PCR を用いて、Pgk-1及びPgk-2 遺伝子の時間空間的な変化を比較検討する。 以上により、マウス雄性生殖細胞のエピジェネティックな制御機構が核小体と、生殖細胞で特異的に発現する遺伝子の位置変化に及ぼす影響を総合的に解釈する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナの影響で第17回日本組織細胞学会、第53回日本臨床分子形態学会、第77回日本顕微鏡学会、第127回日本解剖学会がWeb開催となり、旅費の支出がなかったため。
(使用計画)次年度の旅費もしくは消耗品に使用。
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