• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

マウス脳発生期における海馬CA1錐体細胞の移動制御要因の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K07251
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

北澤 彩子  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10535298)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード大脳新皮質錐体細胞 / 海馬CA1錐体細胞 / 細胞移動 / 細胞移植 / 子宮内胎児脳電気穿孔法 / 放射状グリア線維 / Cux
研究実績の概要

マウス大脳新皮質および海馬CA1錐体細胞の移動メカニズムを制御する因子の探索を行った。昨年度、移動中の両錐体細胞に対しマイクロアレイ分析を行った結果、発現量に差がある遺伝子(FC>10)を69個抽出したがその中で我々はCux1及びCux2に注目した。Cuxは大脳新皮質錐体細胞の上層ニューロンマーカーとして、また転写因子として知られている。子宮内胎児脳電気穿孔法を用いて大脳新皮質錐体細胞においてCux1/2を機能欠損した結果、錐体細胞の移動が正常に行われず、またクライミングモードの様に先導突起の数が増えた。一方、海馬CA1錐体細胞へCux1/2を過剰発現させた場合、ロコモーションに似た双極性の形態に変化した。Cux1のアイソフォームには転写活性を持たないものもあるため、核移行部位を除去したCux-ΔHDプラスミドを作製し過剰発現させた結果、前述した様な形態変化は見られなくなった。
次に、Cux1/2を過剰発現させた海馬CA1錐体細胞を、大脳新皮質の錐体細胞層へ異所的に移植した結果、従来の異所移植では大脳新皮質領域において正常な移動を行わない海馬CA1錐体細胞が、僅かながらロコモーションモードのように移植部位から脳表面方向へ勢いよく移動する様子が観察された。以上の結果から、Cuxが大脳新皮質と海馬CA1の移動様式の違いを生じる分子スイッチであることを示した。
発生期の海馬CA1領域に存在する放射状グリア線維の立体構造を再構築するため、昨年度、透明化した脳を撮影した画像の処理を行った。結果として細胞体から伸長している放射状線維は胎生15日頃には、途中で大きくカーブを描きつつ、その終着点は大脳新皮質領域の放射状グリア線維とは異なり、細胞体のより後部に存在することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度は、マイクロアレイの解析結果からCuxを見出し、この遺伝子が大脳新皮質錐体細胞のロコモーションモードに必要であり、海馬CA1錐体細胞のクライミングモードをロコモーションモードのように変化させ、大脳新皮質錐体細胞層を移動するに十分な働きを持つことを見出した。論文作成を行い投稿する際に申請者が産休を取得したため昨年度中に論文投稿が実現しなかった。産休後すぐに職場復帰したが予定よりも進行は遅れていると考えている。

今後の研究の推進方策

最終年度(延長)であるため、マウス大脳新皮質および海馬CA1錐体細胞の移動様式を制御する因子としてCux遺伝子を同定した結果を論文として発表する。論文投稿にあたり、追加実験が必要となる場合が考えられるため、随時必要な研究を行う予定である。また、論文発表と並行して、これまで得られた結果を積極的に学会などで発表する。
胎生15.5日目のCA1領域の放射状グリア線維の三次元構造をおおよそではあるが明らかにすることができた。この複雑な形状がこの時期特有のものであるのか、あるいは発生過程で生じたものであるのかを検討するために、発生時期の早い段階での三次元構築を試みたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

(理由)昨年度に引き続き、5月まではCovid-19の影響下で国内外学会用の旅費や参加費が減ったため。また、産休を取得したこともあり実験が計画通りに進まなかったため。
(使用計画)今年度は論文投稿にかかる経費と追加実験にかかる費用、および学会発表も積極的に行う予定である。
胎生13.5日目の海馬CA1領域の放射状グリア線維の三次元構築を行い胎生15.5日目に解析した結果と比較する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A Unique "Reversed" Migration of Neurons in the Developing Claustrum2023

    • 著者名/発表者名
      Kota Oshima, Satoshi Yoshinaga, Ayako Kitazawa, Yuki Hirota, Kazunori Nakajima, Ken-Ichiro Kubo
    • 雑誌名

      The Journal of neuroscience

      巻: 43 ページ: 693-708

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.0704-22.2022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Propagation of neuronal micronuclei regulates microglial states2023

    • 著者名/発表者名
      Sarasa Yano, Natsu Asami, Yusuke Kishi, Hikari Kubotani, Yuki Hattori, Ayako Kitazawa, Kanehiro Hayashi, Ken-ichiro Kubo, Mai Saeki, Chihiro Maeda, Kaito Akiyama, Tomomi Okajima-Takahashi, Ban Sato, Yukiko Gotoh, Kazunori Nakajima, Takeshi Ichinohe, Takeshi Nagata, Tomoki Chiba, Fuminori Tsuruta
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2023.07.31.551211

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 超早産児に生 じる脳障害の新規マウスモデルの解析.2023

    • 著者名/発表者名
      久保健一郎, 園田愛莉, 角田安優, 植松優毅, 内藤礼, 稲見元太, 森本桂子, 林周宏, 吉永怜史, 北澤彩子, 井上健, 出口貴美子, 仲嶋一範.
    • 学会等名
      第65回日本小児神経学会学術集会.
  • [学会発表] 空間トランスクリプトームで解明する統合失調 症における分子変化.2023

    • 著者名/発表者名
      吉永 怜史, レオン フリオ, 日野 瑞城, 安藤 吉成, ムーディー ジョナサン, 長岡 敦子, 北澤 彩子, 林 周宏, 仲嶋 一範, ホン チュンチャウ, 國井 泰人 , シン ジェイ, 久保 健一郎.
    • 学会等名
      第64回日本神経病理学会総会学術研究会/第66回日本神 経化学会大会 合同大会.
  • [学会発表] 発生過程に おける大脳新皮質中間帯での神経細胞の移動様式の解析.2023

    • 著者名/発表者名
      内藤礼, 笠井祐登, 中村孝祐, 吉永怜史, 北澤彩子, 久保健一郎.
    • 学会等名
      第140回成医会総会.
  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/AKita

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi