研究課題/領域番号 |
20K07253
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
永岡 唯宏 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 助教 (70634864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 平面内細胞極性 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
平面内細胞極性は細胞の頂端方向と垂直方向の細胞極性である。その極性を担う蛋白質群は平面内細胞極性因子と呼ばれ、それらが細胞内で磁石のN極、S極のように局在することによって、細胞シート内で細胞を一定の方向に整列させている。その極性形成メカニズムの一つとして極性因子のユビキチン化による分解があるが、その詳細にはいまだに不明な点が多いのが現状である。我々は、以前、平面内細胞極性因子vangl2が同じ極に局在するprickle2のユビキチン化と分解を促進していることを示した。本研究課題では、vangl2/prickle2複合体に含まれるユビキチン化因子を同定して、哺乳動物のPrickle2分解機構の一端を明らかにし、その生理的な作用を解明することを目的としている。 本年度は、vangl2/prickle2複合体に含まれる因子を質量分析によって網羅的に解析し、その中からユビキチン化に関わる因子を同定する計画であった。現在、質量分析データの解析中で、ユビキチン化に関わる因子の同定には至っていない。しかし、別のアプローチでvangl2に結合する新規の因子を同定した。この新規因子は筋肉に発現する分子で、これらの相互作用は筋肉において細胞間相互作用を制御しうる。今後は、本研究の主目的であるユビキチン化因子の同定を行うことに注力しながら、今回見つかった新規因子についても生化学的、生理学的な解析を行い、平面内細胞極性の成立過程のメカニズムを明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Vangl2/Prickle2複合体に含まれる因子を質量分析によって網羅的に解析し、その中からユビキチン化に関わる因子を同定するために、FLAG-Vangl2(野生型、N末端欠損型、またはPrickleとの結合性が消失したC末端欠損型変異体)とHA-Prickle2をヒト胎児腎由来293T細胞に共発現させ、その細胞抽出物を抗FLAG抗体カラムで精製した後、サンプルは還元アルキル化及び、トリプシン消化後に、本学の共同利用研究設備サポートセンターに設置されているNanoLCと質量分析装置OrbitrapによりLC-MS/MS分析を行った。現在は、データ解析中で、ユビキチン化分子の同定には至っていないため、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Vangl2/Prickle2複合体のユビキチン化候補因子の同定を進める。同定後は、その因子の発現プラスミドとsiRNAを作製し、Vangl2/Prickle2発現細胞に共導入してPrickle2のユビキチン化および分解をウェスタンブロットで確認する。候補因子を過剰発現させた場合にはユビキチン化、分解が促進され、siRNAの場合にはそれらが抑制されると考えられる。また、Prickle2、Vangl2、候補因子を細胞に発現させ、共免疫沈降により候補因子とPrickle2あるいはVangl2との蛋白質間相互作用があるかどうかを確認する。また、平面内細胞極性シグナルはWnt5aによって活性化されるが、Vangl2によるPrickleのユビキチン化に関してその影響を調べた報告はない。そこで、Wnt5aシグナルの有無がPrickleのユビキチン化に影響を与えるかも同時に調べる。また、マウスの神経管形成期であるE8.5からE10.5の胚で候補因子の遺伝子発現をin situハイブリダイゼーションによって確認する。本年度は、質量分析とは別のアプローチではあるが、Vangl2に結合する新規の因子を同定した。この新規因子は筋肉に発現する分子で、これらの相互作用は筋肉において細胞間相互作用を制御しうる。今後は、今回見つかった新規因子とVangl2の相互作用についても生化学的、生理学的な解析を行い、筋発生や金再生における、この相互作用の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
執行率91.3%で、概ね計画通りに使用したが、キャンペーン利用や、より安価な方法を検討したことで、次年度使用額が生じた。現在の世界の状況を鑑みると、我々の分野で使用される試薬や物品は不足する傾向にあり、価格高騰の恐れもある。繰越分はその対応に使用されることが考えられる。
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