研究課題
小胞体は、Ca2+の貯蔵庫であり、小胞体からのCa2+放出は生体活動・維持に重要な様々なシグナルを誘導する。近年、小胞体からの Ca2+ 放出には、小胞体膜を介したK+輸送の重要性が示唆されている。本研究では、我々が小胞体においてK+-ATPase(K+ポンプ)として機能することを見出した「ER-ATPase(論文発表前のため仮称)」の生理機能を明らかにすることを目的とした。本年度は、小胞体のCa2+ホメオスタシスとER-ATPaseによるK+輸送機能との関連について検討した。Fura2-AMを用いたCa2+イメージングにおいて、小胞体のCa2+貯蔵レベルが、ER-ATPaseノックダウン細胞では有意に亢進し、過剰発現細胞では低下した。興味深いことに、ER-ATPaseのK+輸送機能が低下する変異体の過剰発現細胞では有意な変化は見られなかった。また、ER-ATPaseをノックダウンさせることでERストレスが生じ、細胞増殖が有意に阻害されることを見出した。この細胞増殖の抑制は、ER-ATPaseの野生型をトランスフェクションすることで回復したが、K+輸送が低下する変異体をトランスフェクションしても回復しなかった。以上の結果から、ER-ATPaseのK+輸送は小胞体のCa2+ホメオスタシス制御に関与しており、その異常によりERストレスが惹起されることが示唆された。また、ER-ATPaseのがん細胞における機能解析を行う過程において、Na+,K+-ATPaseの阻害剤である強心配糖体ががん細胞の解糖系を阻害することを見出した。さらに、本研究においてER-ATPaseと機能連関することを明らかにしたATP13A2がH+,K+-ATPaseとして機能することを明らかにした。
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