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2020 年度 実施状況報告書

多種センサーを用いた視交叉上核AVPニューロンのin vivo解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K07259
研究機関金沢大学

研究代表者

津野 祐輔  金沢大学, 医学系, 助教 (70827154)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード概日リズム / 視交叉上核 / ファイバーフォトメトリー / カルシウムシグナル / in vivo
研究実績の概要

視交叉上核AVPニューロン群で特異的にGABAが放出できない、概日リズム障害マウスにおいて、AVPニューロンのカルシウムリズムと、動物行動リズムとの関係性が崩れることを、ファイバーフォトメトリー法を用いて示し、論文を発表した(Maejima, Tsuno et al., 2021, PNAS)。全身の概日リズムの同調を制御する視交叉上核において、背内側部のAVPニューロンと、腹外側部のVIPニューロンは、異なる機能を持つと考えられている。AVPニューロンのみで特異的に時計遺伝子を破壊すると、概日リズムの著しい減弱が観察されることから、視交叉上核のAVP ニューロンが概日リズム発振に極めて重要な役割を果たすと示唆される。AVPニューロンからのGABAの放出の役割を調べるために、AVPニューロン特異的に小胞性GABAトランスポーターをノックアウトしたマウスを用いた。その結果、このマウスではAVPニューロンのカルシウムリズムと、動物行動リズムとの関係が崩れることが観察された。しかしながら、このカルシウムリズムはカルシウムインジケータGCaMPを用いて計測しており、カルシウム非依存的な日内リズムの影響の可能性が、除外できていなかった。この可能性を除外するためにコントロール実験として、カルシウムに依存しない蛍光タンパク質EGFPを発現させ、シグナルに明確な日内リズムが見られないことを確かめた。さらに、本研究で用いているファイバーフォトメトリー法の妥当性を検証するため、既に日内リズムが報告されている視交叉上核VIPニューロン群にカルシウムインジケータを発現させ、その日内リズムが既存の報告と一致することを確認した。本結果により、AVPニューロンのGABA放出が、マウスの行動リズムを制御することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

視交叉上核AVPニューロン群で特異的にGABAが放出できない、概日リズム障害マウスにおいて、AVPニューロンのカルシウムリズムと、動物行動リズムとの関係性が崩れることを、ファイバーフォトメトリー法を見出した。しかしながら、カルシウム非依存的な日内リズムの影響がある可能性が、除外できていなかった。この可能性を除外するためにコントロール実験として、カルシウムに依存しない蛍光タンパク質EGFPを発現させ、明確な日内リズムが見られないことを確かめた。さらに、本研究で用いているファイバーフォトメトリー法の妥当性を検証するため、既に日内リズムが報告されている視交叉上核VIPニューロン群にカルシウムインジケータを発現させ、その日内リズムが既存の報告と一致することを確認した。これらの結果を元に、論文を発表することが出来た。時計遺伝子Per2の発現をモニターできるPer2.Venusと、GABAセンサーであるiGABASnFRを用いた実験も進めている。具体的には、弱い発現強度を補うために、LEDの光刺激強度を出来る限り抑えることで、退色を防いでいる。また、光ファイバーのスリーブに遮光を行うことで、環境ノイズが大幅に減少した。S/N比の高い安定した記録に向けて、改善を重ねている。アセチルコリンセンサーであるGACh2.0についても、発現を確かめた。また、ファイバーフォトメトリーの多動物同時記録法も進めており、日内リズムが観察できてきている。

今後の研究の推進方策

今後は、立ち上げたファイバーフォトメトリー長期記録の系を用いて、カルシウムインジケータ以外のセンサーについても記録を行う。記録法の改善を重ね、S/N比の高い安定した記録の実現を目指す。時計遺伝子Per2の発現をモニターできるPer2.Venusと、GABAセンサーであるiGABASnFRを用いた実験を進め、個体数を増やして結果を確立する。視交叉上核AVPニューロンとVIPニューロンにおいて、カルシウムリズム、時計遺伝子、GABA入力がどのような関係性になっているのかを明らかにする。また、多動物同時記録法を開発し、本研究の最大のネックであるデータ収録に時間がかかることを克服し、研究のスピードアップを図る。これまでの研究で、視交叉上核AVPニューロン特異的に時計遺伝子を操作したマウスで、個体の概日リズムに著しい異常が出ることから、視交叉上核のAVPニューロンが概日リズムの発振やその周期の決定に極めて重要な役割を果たすと考えている。AVPニューロンのみの時計遺伝子を操作しているので、AVPニューロンの活動変化が個体の概日リズム異常を引き起こしていると推測されるが、その確固たる証拠はまだ得られていない。視交叉上核のスライスを用いた実験では、必ずしも個体サーカディアンリズムの変化と一致する結果が得られておらず、視交叉上核ネットワークや液性因子の関与も示唆される。よって、AVPニューロンが概日リズムを発振するメカニズムを明らかにするためには、自由行動下マウスのAVP ニューロン活動を観察することが必要不可欠である。本研究により、視交叉上核内における概日リズム制御の、神経回路メカニズムに迫る。

次年度使用額が生じた理由

初年度(令和2年度)に購入予定であったファイバーフォトメトリー機械一式を、次年度(令和3年度)購入予定に変更する。次年度の予算は100万円であり、機械一式購入予算に満たないため、初年度予算の残余分44万円と合算して購入予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] GABA from vasopressin neurons regulates the time at which suprachiasmatic nucleus molecular clocks enable circadian behavior2021

    • 著者名/発表者名
      Maejima Takashi、Tsuno Yusuke、Miyazaki Shota、Tsuneoka Yousuke、Hasegawa Emi、Islam Md Tarikul、Enoki Ryosuke、Nakamura Takahiro J.、Mieda Michihiro
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 118 ページ: e2010168118

    • DOI

      10.1073/pnas.2010168118

    • 査読あり
  • [備考] 体内時計のオン・オフタイマー設定機構の一端を解明

    • URL

      https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/88959

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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