研究課題/領域番号 |
20K07260
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安藝 翔 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (80767210)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PI3K / エンドサイトーシス / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
PI3K-C2α及びこれと構造的に近縁のPI3K-C2βは共に全身に発現し、細胞内局在も類似している。PI3K-C2α及びPI3K-C2βを内皮以上に高発現する心筋、平滑筋特異的な二重KO マウスを作製したところ、PI3K-C2α、PI3K-C2βいずれかの単独KOマウスには異常が見られなかった。α, βいずれかの単独KOではラット・ウサギとは異なり、血圧の異常は認められなかったが、平滑筋特異的二重KOマウスにおいて血圧低下が観察された。すなわち、血管作用には種差が存在する可能性がある。心筋特異的二重KOマウスの約半数は生後1~2日以内に死亡し、高解像度心エコーによって心臓収縮不全が認められ、生直後から起こる生理的な心筋リモデリング(右室退縮と左室肥大)が不完全であった(未発表, 投稿準備中)。心筋の電子顕微鏡像では、サルコメア構造の破綻と変性ミトコンドリアの蓄積、培養細胞レベルで過剰な分裂によるはミトコンドリアの著しい断片化が観察された。またこれらの観察から心臓・血管機能におけるPI3K-C2αおよびPI3K-C2βの独自作用・重複作用の存在が示唆された。以上よりクラスII PI3Kはミトコンドリアの融合と分裂を制御し、ミトコンドリア恒常性維持に必須な分子である事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年より所属が変わったが、引き続き金沢大学と連携をとりプロジェクトに取り組んでいる。本プロジェクトに必要なKOマウスは既に移動手配済みである。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアは常に融合と分裂を繰り返すダイナミックなオルガネラであり、融合と分裂のバランスがミトコンドリアの形態・機能維持に重要であり、その破綻は酸化ストレスの増加、老化や様々な疾患を進行・増悪させる。しかし、ミトコンドリア融合・分裂メカニズムは未だ不明な点が多い。研究代表者は、ホスホイノシタイド(PPI)代謝物PI(4)Pを基質とするクラスII 型PI3キナーゼ(クラスII PI3K)欠損が、過剰な分裂によるミトコンドリア断片化を引き起こす事を見出している。蛍光標識したクラスII PI3K及び各種オルガネラ発現ベクターを遺伝子導入し、超解像度ライブイメージングによりミトコンドリアダイナミクス機構を評価する。ナノスケールレベルでのミトコンドリアダイナミクス機構の解析により、ミトコンドリア融合・分裂機構の観察が可能となる。また、申請者が有している各種PPI 特異的蛍光標識プローブを用いた超解像度ライブイメージングにより、ミトコンドリアダイナミクスを制御するPPI代謝物が明らかとなる。
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