研究課題/領域番号 |
20K07261
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岸 博子 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40359899)
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研究分担者 |
小林 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80225515)
張 影 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10711260)
森田 知佳 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70763796)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血管平滑筋 / 異常収縮 / ビメンチン / カルパイン |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、血管平滑筋異常収縮のシグナル伝達経路としてSPC/Fyn/ROK経路を見出した。更に、Fyn下流の新規血管平滑筋異常収縮シグナル分子の一つとして中間径フィラメントのビメンチンを同定した。異常収縮刺激時にビメンチンはカルパインによりN末端が切断・除去される限定分解を受け、更に、カルパイン阻害薬PD150606が血管平滑筋異常収縮を特異的に抑制した事から、『構造蛋白として知られるビメンチンが、真に、カルパイン活性依存的に血管平滑筋異常収縮のシグナル分子として機能するのか?』という学術的「問い」に至り、1) 限定分解で生じたビメンチン断片は、どの様にして、血管平滑筋異常収縮のシグナル分子として機能するのか?2) Ca2+依存性蛋白質分解酵素であるカルパインが、なぜCa2+非依存性の血管平滑筋異常収縮のシグナル伝達において活性化するのか?を解明する事を目的として本研究を行った。 本年度は限定分解で生じたビメンチン断片を哺乳動物細胞で発現するHaloTag-ヒトビメンチン断片の哺乳細胞発現ベクターを構築した。更に、カルパインの内在性阻害因子であるカルパスタチンの哺乳細胞発現ベクターをヒト冠状動脈平滑筋細胞へトランスフェクションしてカルパスタチンを過剰発現させ、SPCで刺激し、異常収縮のシグナル伝達(FynやROKの活性化)が抑制されるかを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の遂行に重要なツールであるHaloTag-ヒトビメンチン断片の哺乳細胞発現ベクターの構築が出来た。更に、カルパスタチンの哺乳細胞発現ベクターをヒト冠状動脈平滑筋細胞へトランスフェクションしてカルパスタチンを過剰発現させる事ができた事から、計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
計画1 ビメンチン断片と特異的に相互作用する分子の探索(岸、張、大学院生A):本年度構築したHaloTag-ヒトビメンチン断片の哺乳細胞発現ベクターをヒト冠状動脈平滑筋細胞にトランスフェクションしてHaloTag-ヒトビメンチン断片を過剰発現させた後、HaloTagプルダウンアッセイを行い、ビメンチン断片と特異的に相互作用する分子を、高感度タンデム型質量分析計を用いて探索する。 計画2 異常収縮刺激時のカルパイン活性化様式の解明(岸、大学院生B):本年度に引き続き、カルパスタチンの哺乳細胞発現ベクターをヒト冠状動脈平滑筋細胞へトランスフェクションしてカルパスタチンを過剰発現させてSPCで刺激し、異常収縮のシグナル伝達(FynやROKの活性化)が抑制されるかの解析を進める。 計画3 ビメンチン断片が異常収縮シグナル伝達に与える影響の検討:HaloTag-ヒトビメンチン断片を過剰発現させた細胞で、異常収縮のシグナル伝達経路が活性化するか(SPC刺激無しでもFynやROKが活性化されるか)を解析する。 計画4 Beta-escinスキンド血管平滑筋標本を用いたビメンチンやカルパインの血管平滑筋異常収縮への関与の直接的証明 (小林、張、大学院生C、岸):ビメンチン断片、カルパイン、カルパスタチンの組換え蛋白質を発現・精製してbeta-escinスキンド血管平滑筋組織に導入し、ビメンチン断片やカルパインがCa2+濃度が一定の状態で収縮(Ca2+非依存性の異常収縮)を起こすか、また、カルパスタチンがSPCによる異常収縮を抑制するか、を検討する。 計画5 くも膜下出血(SAH)後遅発性脳血管攣縮モデルマウスを用いたin vivoでの検証 (森田、岸):ヒトのSAH病態をよく反映するマウスのウィリス動脈輪穿孔SAHモデルを作成し、カルパイン阻害薬PD150606の血管攣縮抑制効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、学会がWeb開催となり旅費がかからなかった。また、いくつかの消耗品がキャンペーンにより予想より安価に購入できた。
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