研究課題/領域番号 |
20K07265
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
下川 哲昭 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (90235680)
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研究分担者 |
鯉淵 典之 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80234681)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ネグレクト / CIN85 / プロラクチン / オキシトシン / 乳汁 |
研究実績の概要 |
私達はubiquitin ligaseとして機能するCblと相互作用を持つCIN85 (Cbl-interacting protein of 85 kDa) の機能解析を進めている。そのノックアウトマウスは「多動」と「ネグレクト」の表現型を示した。多動の表現型は脳線条体のドパミン受容体におけるエンドサイトーシスの破綻により引き起こされることを明らかにした。 一方、育児放棄(ネグレクト)の発生については未だ現象論の羅列に過ぎず分子を基盤とした発現メカニズムは不明である。我々は、育児行動の発現には胎児期に母体からの下垂体前葉ホルモンであるプロラクチン (PRL) シグナルが必要であると報告した。この発見に基づき、分娩後の乳汁成分に存在する育児行動やネグレクトを誘発させる機能分子の同定と解析を行いネグレクトを抑制させる分子の作用機序の解明を目指している。 1. 抗体との結合によるホルモンを除去した乳汁(ミルク)の作成 ミルク中に存在する将来の育児行動発現のために必要な成分を同定・解析するために授乳中のC57BL/6J系統のマウスよりミルクを搾乳した。授乳中のマウスから搾乳したミルク1 mLあたりのOxt濃度は158.7±16.2 pg (Mean ± SD) であった。一方、マウスOxt抗体との結合により、Oxtを除いたミルクのOxt濃度は59.8±3.3 pgであった。Oxt抗体との結合により無処理のミルクの62.3%が除去された。 2. マウス血清・ミルクからの胎盤性ラクトゲン(PL)の測定法の確立 PLは妊娠マウスにのみ発現するので、その血清と成熟オスの血清を比較し、いくつかのピークからペプチドを探索しBlast Pで特異性を確認した。その結果、マウス胎盤性ラクトゲンのペプチド配列の一部 (EKVTSLPNYRLP) を標準物質としてマウス血清・ミルクからの測定法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 抗体との結合によるホルモンを除去した乳汁(ミルク)の作成に関しては、母乳成分のうち育児行動の発現に重要と思われる分子を除去したミルクでの哺育によるネグレクト行動を解析することで、ネグレクトの予防に必要な分子の同定が可能であると考えた。本研究結果では、ネグレクトの予防の解析を進める上で必要な試料の作成が大きく進展した。Oxt抗体との結合によりOxtを62.3%除去したミルクを作成できた。しかし、この結果は満足できる結果ではないが、今後は抗体の質・量や結合方法をさらに検討して残存Oxtが検出限界以下になるまで除去可能な方法を確立できると考えている。 2. マウス血清・ミルクからの胎盤性ラクトゲン(PL)の測定法の確立では、PRLの他に胎盤性ラクトゲン (PL) に焦点をあてて解析を始めた。PLが母乳に含まれ、それが次世代の育児行動を制御しているとの報告はない。しかし、ミルク中や母体血中のPLを高感度で測定できる方法がないため、まずその測定法を確立した。本研究結果により液体クロマトグラフィー質量分析法 (LC/MS/MS)でミルク中や母体血中のPLを高感度での測定が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの我々の研究により、胎児期のプロラクチン (PRL) 受容が次世代の育児行動の発現に重要であることは明らかである。しかし、育児行動の発現の複雑さや多様な行動様式を考え合わせると以下の2つの解決すべき点がある。 (1) 胎児期だけでなく分娩後の乳汁の成分に育児行動を発現させる機能はないのか? 本研究では、(1)に関しては、母乳成分のうち育児行動の発現に重要と思われる分子を除去したミルクでの哺育によるネグレクト行動を解析することで、ネグレクトの予防に必要な分子の同定が可能であると考えた。本研究結果では、ネグレクトの予防の解析を進める上で必要な試料の作成が大きく進展した。Oxt抗体との結合によりOxtを62.3%除去したミルクを作成できた。しかし、この結果は満足できる結果ではない。今後は抗体の質・量や結合方法をさらに検討して残存Oxtが検出限界以下になるまで除去可能な方法を確立したい。 (2) 正常な育児行動の発現とネグレクトの差を胎児期におけるPRLシグナルの受容だけで説明できるのか? 妊娠期の母体から分泌された生理活性物質が胎児脳に影響を与え将来の育児行動を制御しているという報告はない。我々が報告したPRLが最初である。本研究では、PRLの他に胎盤性ラクトゲン (PL) に焦点をあてて解析を始めた。PLが母乳に含まれ、それが次世代の育児行動を制御しているとの報告はない。しかし、ミルク中や母体血中のPLを高感度で測定できる方法がないため、まずその測定法を確立した。本研究結果により液体クロマトグラフィー質量分析法 (LC/MS/MS)でミルク中や母体血中のPLを高感度での測定が可能になった。今後は母体血中やミルク中のPL動態と仔の育児行動の発現についての相関を解析するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、直接的な共同研究が減少したために使用額が少なくなった。次年度は乳汁中や血液中のホルモン/生理活性因子の測定のためのELISA kitが多く必要になるので使用計画の変更は必要ないと思われる。
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