研究課題/領域番号 |
20K07268
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 真理 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80435817)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膜電位 / ERK / イメージング |
研究実績の概要 |
膜電位とは細胞内外のイオン組成の違いに基づく、細胞内外間での電位差のことであり、神経細胞に限らず、すべての細胞が有している。本研究では、この膜電位が、細胞内分子シグナルをどのように制御しているかイメージング技術を駆使して明らかにすることを目的としている。 まず、細胞内シグナルの中でもERK活性に着目し、イメージングによりERK活性を測定する系を構築するために、新たに顕微鏡を導入した。年度の前半に、顕微鏡の検討、選定を行い、年度の後半に新規導入した顕微鏡を用いて、実験を開始することができた。膜電位は、細胞外液のカリウム濃度を変化させることにより、人為的に操作できる。この系を用いて膜電位を変化させたときの、細胞内ERK活性をイメージングにより、測定したところ、膜電位の変動によって、ERK活性も変動することが明らかとなった。また、同時に生化学的解析用にサンプルを調整し、これを用いて、膜電位変化にともなうERK活性変化のメカニズムの検討を行った。これまでに脱分極によって、 いくつかのMAPカイネースカスケードが活性化していることが分かったが、全容は今後の課題である。 細胞レベルでの実験により、膜電位がERK活性を制御していることが明らかとなったが、個体レベルでの検証を行うために、現在、蛍光膜電位プローブ、ERKの蛍光プローブを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュラインを樹立することを目指している。現在は、最適なプロモーターについて、検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顕微鏡の導入が年度の後半になってしまったことにより、多少の遅れはあるものの、イメージングの実験を開始できたことから、おおむね予定通り進んでいる。また使用細胞の調子が悪くなり、実験が滞った時期があり、その間も多少遅れが生じたが、現在、それは解決済みである。
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今後の研究の推進方策 |
膜電位を変化させる方法として、今後電気生理学的手法や光遺伝学も利用する予定である。電気生理とイメージングを組み合わせた実験系は構築し、予備的結果得られているので、今後はさらにデータの精度を上げる予定である。光遺伝学については、今後、実験系を構築する予定である。膜電位変化の下流のシグナルカスケードについては、MAPカイネースカスケードが関与していると思われるが、さらなる詳細を詰める予定である。また、細胞が膜電位変化を受容するメカニズムについて明らかにする予定である。各種トランスジェニックゼブラフィッシュが樹立されたら、これを用いて、イメージングする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大型機器購入予定で前倒し請求をしたが、その後、緊急を要する別物品購入に充てたため、当初予定していた機器の購入ができず、次年度にまわすこととした。次年度は、今年度購入を予定していたDigidata1550を購入し、電気生理とイメージングを組み合わせた実験を進める予定である。
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