研究課題
電解質異常は様々な原因によって生じ、主に神経や筋という興奮性細胞の機能を損なう。高カリウム(K+)血症では知覚過敏筋力低下という神経・筋症状の他、不整脈や心停止等の重症循環器症状を呈する。このような症状の多くは細胞内外のK+濃度差の減少と細胞外K+の作用によるK+チャネルのイオン透過性(コンダクタンス)の上昇によるものと考えられてきた。しかしながら、細胞外K+はイオンチャネルの発現そのものを制御し、細胞の長期環境順化の1つの対応機序として作用する結果が示された。すなわち、細胞外のK+濃度が高い環境で細胞を培養するとKCNJ2チャネルのmRNAや蛋白の発現が増加し、かつイオンチャネルとして機能してIK1電流が増加することが確認された。細胞外K+がKCNJ2チャネルの機能的発現を増加することが示された。細胞外環境を、高Na+、高K+、高Mg2+、 高Cl―としてラット心筋細胞を培養してDNA Arrayを用いて網羅的に全遺伝子の発現動向を解析した。In Silico 解析によって目的チャネルの転写に関わる可能性のある転写因子と転写補助因子が同定され、luciferase assayで作用を確認した。確定転写因子を心筋細胞(ラット、ヒト心房筋)とHEK 293細胞に導入し、心筋細胞と異種発現系の両方で目的イオンチャネル、転写因子、及びカリウム結合蛋白(Kbp, YgaU他)の発現が変化するかを電解質異常細胞培養液の元で確認し、機能異常をパッチクランプ法でこれを示した。
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