研究課題
本研究課題を通じ、申請者らは新規の体内時計を障害したモデルラットの作出に挑み、体内時計の振動が弱くなるBMAL-DN TGラットモデル、著しく障害されるVipr2 KOラットモデルの確立に成功した。特に、CRISPR/Cas9法によるVipr2 KOラットの作出について、標的配列のクローニングに苦労したため、オフターゲット効果の評価が最終年度になったが、標的としたVipr2遺伝子以外のオフターゲット候補サイトに塩基の挿入や欠損、置換は確認されず、Vipr2 KO作出に成功したことが確認できた。Vipr2遺伝子の欠損はマウスで体内時計を著しく障害し、Vipr2 KOマウスでは概日リズムが短縮もしくは平坦化することが報告されており、本研究でVipr2 KOラットもまた同様の表現型を示すことを明らかにした。さらにIn situハイブリダイゼーション法を用い、視交叉上核内の時計遺伝子発現リズムを検討したところ、視交叉上核のVipr2欠損により背内側部でのみ大きくリズムの位相がずれることを観察した。Vipr2 KOラットとPer2-dLuc TGラットの交配により得た概日時計の様子を発光でモニタリングできるラットを用いた解析を、冠状断で作成したスライスで行ったところ、Vipr2 KOラットでは体内時計中枢である視交叉上核であっても、発光リズムが素早く減衰した。さらにCCDカメラを用いた解析から発光リズムの消失の仕方に領域間差があることがみえた。最終年度は再現性を確認しつつ、統計的な検討を進めた。また、時計遺伝子は視交叉上核だけではなく、末梢臓器にも存在するが、Vipr2 KO/Per2-dLUCラットの肺組織では、おそらくコルチコステロンリズムの変化によって、野生型ラットに比べて位相が有意に変化したことを観察した。
すべて 2022
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Frontiers in Systems Neuroscience
巻: 16 ページ: -
10.3389/fnsys.2022.1059421