研究実績の概要 |
T細胞は抗原提示細胞により提示された非自己ペプチドをT細胞受容体 (TCR)で認識することにより、細胞内にシグナルが伝わり、免疫反応を惹起する。その際、T細胞は抗原認識の際抗原提示細胞と密に接着し、免疫シナプス (IS) という構造を形成し、繊維状アクチン (F-アクチン) を筆頭に細胞骨格が大規模に再構成される。申請者はこれまで、直線状のF-アクチンを重合するフォルミンファミリータンパクがISにおいて、アクチンの再編成を介してTCRシグナルに促進的に働くことを明らかにしてきた(Thumkeo et al., Science Advances, 2020). 昨年度は、申請者と米国コロラド大学との共同研究で、さらに、生理活性リン脂質LPAが抗原刺激を受けたT細胞のformin分子mDia1の局在と活性化を阻害し、アクチン細胞骨格の構造に異常をきたすことを報告した(Kremer, Buser, Thumkeo et al., PNAS 2022).現在は、LPAからmDia1へのシグナル伝達経路に関わる因子を同定し、分子メカニズムの詳細の解析を進めている。 一方、TCR刺激を受けていない平常状態のT細胞の細胞骨格の構造及び分子制御機構について、以前と変わらずまだ不明な点が多い。本研究では、forminに加えて、もう一つのアクチン重合因子因子であるArp2/3にも着目して、これら分子の役割の解明を目指している、昨年度までは、マウスCD8 T細胞にアクチンの傾向プローブであるEGFP-Lifeactを導入し、超解像度顕微鏡のライブイメージングによって、抗原刺激前後のアクチン細胞骨格の構築観察を行なった。昨年度は、formin阻害剤に加えて、Arp2/3阻害剤を加えた時の構造変化について観察をさらに行なった。
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