研究課題/領域番号 |
20K07289
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梶本 武利 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00509953)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / プロテインキナーゼC / がん |
研究実績の概要 |
本研究は、1)がん細胞のアポトーシス抵抗性におけるS1P-aPKCシグナルの下流シグナルおよび飢餓ストレスとの関係、2)構造ベース創薬に資するレベルでのS1PによるaPKC活性化の分子メカニズム、を明らかにすることを目的としている。2022年度は、2021年度に引き続き、「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」および「がん細胞のアポトーシス抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」の各課題に取り組んだ。「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」では、aPKCの活性化におけるS1P相互作用と翻訳後修飾の関係についてその詳細を分子レベルで明らかにするために、カリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究により細胞レベルでのin vitroイメージング解析を行った。その結果、aPKCの活性化調整においてS1P相互作用および翻訳後修飾間のストイキオメトリが重要な役割を果たすことを明らかにした。また、「がん細胞のアポトーシス抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」では、引き続きがん細胞におけるS1P-aPKCシグナルの下流シグナルタンパク質の探索を進め、細胞の生存に関わるタンパク質を新たに同定した。さらに同定したタンパク質について、主に細胞イメージングの手法を用いてS1P-aPKCシグナルとの関係を検討したところ、S1P-aPKCシグナルは新たに同定したタンパク質の活性化を恒常的に抑制する働きを持つことが明らかとなった。この結果からS1P-aPKCシグナルは、生存シグナルの過剰な亢進による細胞機能の破綻に対して抑制的に働くことで、細胞死の回避に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」および「がん細胞のアポトーシス抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」の個別課題を検討した。その結果、PKCの活性化におけるS1P-aPKC間相互作用・翻訳後修飾間のストイキオメトリの重要性を見出し、またS1P-aPKCシグナルの下流で働く新たな候補タンパク質の同定を達成している。ただ、「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」については、目的の達成に向けてカリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究が必要となったが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航時期が大幅に遅れたため、2022年度内の目標達成には至らなかった。本研究課題の目標達成に向け、研究計画を延長し、引き続き個別課題の検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本研究課題の最終的な目標の達成に向けて、引き続き「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」および「がん細胞のアポトーシス抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」の各課題を遂行すると共に、「S1P-aPKCシグナリングの飢餓ストレスシグナルにおける役割の解明」の課題に取り組む。「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」では、2022年度に引き続き、カリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究によりaPKCの活性化調整におけるS1P相互作用および翻訳後修飾間のストイキオメトリの分子メカニズムの詳細を検討し、aPKCの活性化調整におけるS1P相互作用と翻訳後修飾との関係を立体構造レベルで明らかにする。また、「がん細胞のアポトーシス抵抗性におけるS1P-aPKCの下流シグナルの解明」および「S1P-aPKCシグナリングの飢餓ストレスシグナルにおける役割の解明」については、引き続き新たな下流シグナルタンパク質の同定を試みるとともに、栄養飢餓刺激を中心とするストレスシグナルとS1P-aPKCシグナルとの関係を明らかにし、S1P-aPKCの下流シグナルタンパク質群と飢餓ストレスにおけるがん細胞の細胞死回避の体系的理解を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は2021年度に引き続きin silico解析の比率が高くなり、また「S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムの解明と高解像度の立体構造情報の取得」の課題遂行において必要となったカリフォルニア大学サンディエゴ校への渡航時期が遅れたため、支出が下がった。2023年度における次年度使用額にあたる研究費は、2022年度に引き続き消耗品費として使用するとともに、カリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究に係る費用として使用する。
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