研究課題
慢性疼痛は頻度が高い疾患であるが、既存の鎮痛薬が奏効しないため患者数が増加の一途をたどっている。より有効で安全な新規鎮痛薬が求められていることから、慢性疼痛の病態メカニズムを明らかにし、病態仮説に則った合理的な新薬の開発は急務である。研究代表者らはこれまでに慢性疼痛の一種である神経障害性疼痛モデル動物において、前帯状皮質ミクログリア活性化に伴う炎症が慢性疼痛の情動系異常(不安・うつ様行動)に関与することを明らかにしている。また、神経障害性疼痛モデルマウス脳において、複数の脳領域(前帯状皮質、島皮質、海馬、嗅周皮質、扁桃体)においてミクログリアの活性化を確認した。そこで、本研究では神経障害性疼痛により生じるミクログリア活性化に伴うミクログリアの機能変化について解析し、神経障害性疼痛による情動系および感覚系機能異常に対するミクログリアの役割を明らかにすることで、脳ミクログリアを標的とした新たな慢性疼痛治療薬の開発への手がかりとする。本年度は以下の研究成果を得た。1、神経障害性疼痛モデルマウスにおける認知機能低下に対して、炎症反応を惹起するdamage-associated molecular patterns (DAMPs)の一種であるhigh mobility group box-1 (HMGB1)放出による海馬ミクログリアの活性化に伴う神経細胞の形態変化(突起短縮とスパイン密度低下)が関与する可能性が示唆された。2、神経障害性疼痛モデルマウスにおける海馬神経細胞の突起の短縮にはIL-6が関与することが示唆された。3、神経障害性疼痛モデルマウス海馬におけるミトコンドリア機能障害に伴うIFN増加による海馬ミクログリアの活性化が、神経障害性疼痛により生じる不安うつ様行動に関与する可能性が示唆された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
Experimental Neurology
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