研究課題/領域番号 |
20K07292
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有岡 将基 九州大学, 医学研究院, 助教 (20733554)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん転移 / 血管内皮細胞 / beta1インテグリン / 細胞接着 |
研究実績の概要 |
本研究は細胞性粘菌分化誘導因子Differentiation inducing factor-1(DIF-1)のがん転移抑制機構を解明し、DIF-1の抗腫瘍薬としての臨床応用を目指す研究である。がん転移予防をターゲットにした臨床応用された治療薬は未だ存在しない。本研究はDIF-1のがん転移予防薬としての創薬を目指し、高悪性・高転移性の様々ながん細胞を用いて、1.がん細胞と血管内皮細胞の接着、2.がん細胞の接着分子、3.血管内皮細胞表面のレセプター分子、4.がん細胞と免疫系細胞の炎症性サイトカイン分泌、5.がん転移に対する生体内での効果、これら5点に対するDIF-1の影響を検討する。 1.Green Fluorescence Protein (GFP) を導入したヒト高転移性がん細胞株(悪性黒色腫:A2058、B16Bl6, 大腸癌細胞株:HCT116)をコンフルエントした血管内皮細胞HUVECの上に、リポポリサッカライド(LPS)およびDIF-1と共に播種する。蛍光顕微鏡で接着細胞数 (GFP陽性がん細胞) はDIF-1によって減少し、LPS刺激で増加していた。 2.がん細胞表面に存在し、血管内皮細胞との接着分子である様々なインテグリンのDIF-1による発現変化をFlow cytometerで確認した。beta-integrinが減少していた。この発現減少の変化は免疫染色およびウェスタンブロット法においても確認された。 3.LPSで血管内皮細胞表面にE-selectin, Vascular Cell Adhesion Molecule 1 (VCAM-1), Intercellular Adhesion Molecule-1 (ICAM-1)の発現を誘導し、DIF-1はその発現を減少させることがFlow cytometer、免疫染色およびウェスタンブロット法で明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はDIF-1のがん転移予防薬としての創薬を目指し、高悪性・高転移性の様々ながん細胞を用いて、1.がん細胞と血管内皮細胞の接着、2.がん細胞の接着分子、3.血管内皮細胞表面のレセプター分子、4.がん細胞と免疫系細胞の炎症性サイトカイン分泌、5.がん転移に対する生体内での効果、これら5点に対するDIF-1の影響を検討する。 現在、1から3は概ね検討されており、仮説に近い結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はDIF-1のがん転移予防薬としての創薬を目指し、高悪性・高転移性の様々ながん細胞を用いて、①がん細胞と血管内皮細胞の接着、②がん細胞の接着分子、③血管内皮細胞表面のレセプター分子、④がん細胞と免疫系細胞の炎症性サイトカイン分泌、⑤がん転移に対する生体内での効果、これら5点に対するDIF-1の影響を検討する。 ④については、DIF-1がTHP-1やRAW264.7細胞に与える影響を検討しているが、実験条件の探索を行っている段階である。 ⑤については、すでに実験を始めている。control群、DIF群、LPS群、LPS+DIF群の4グループを設定している。麻酔下で8週齢の免疫不全マウスの尾静脈にGFP発現したA2058細胞、B16BL6細胞、HCT116細胞(各1.0 × 105個)を27Gの針で注入することで肺転移を形成できる。コントロール群及びLPS群は大豆油をDIF投与群は大豆油に溶解したDIF-1(300mg/kg/day)を腫瘍投与前の3日間経口投与とLPSの腹腔内投与を行う。肺は腫瘍コロニー数の比較、GFP発現量の比較、免疫組織化学染色で肺血管内皮細胞やがん細胞の細胞表面レセプター分子の発現の変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品を割引価格で購入できたため。次年度の抗体等の物品費として使用する予定である。
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