研究課題/領域番号 |
20K07294
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
松本 みさき 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80533926)
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研究分担者 |
岩田 和実 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305571)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 関節炎 / 自己免疫疾患 / リポポリサッカライド / リポ多糖 |
研究実績の概要 |
C57BL6系マウスは実験的コラーゲン誘発性関節炎モデルを発症しにくい系統であることが知られており、実際にトリ由来II型コラーゲン/完全フロイントアジュバント免疫だけでは関節炎を発症しなかった。しかし、細菌由来成分であるリポポリサッカライド(LPS)を腹腔内投与すると、四肢関節の腫脹が認められ関節炎を発症した。一方、Nox1遺伝子欠損マウスでは関節炎の発症およびその症状が軽減したことから、機序の解明を進めた。LPS投与2時間後のリンパ組織を回収しリアルタイムPCRによる定量解析を行なったところ、脾臓、骨髄、回腸においてNox1 mRNAの著しい発現増加が認められた。Nox2 mRNAも増加傾向を示したが、その増加率は2倍程度にとどまった。一方、鼠径リンパ節、胸腺ではNox1 mRNAの有意な変化は認められなかった。抗体標識磁気ビーズを用いて各種免疫細胞を分取し、脾臓のNox1 mRNA増加に寄与する細胞群を解析したところ、CD11b陽性単球・マクロファージとCD11c陽性樹状細胞においてその増加は顕著であった。このことから、これらの細胞群におけるNox1増加が関節炎の発症に関係する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初Nox2遺伝子欠損マウスを導入し対比研究を行う予定であったが、研究対象となる免疫細胞種の絞り込みが必要であることから先にNox1遺伝子欠損マウスの表現型解析を優先して進めることとした。今回Nox1遺伝子の発現増加について興味深い知見が認められたことから、トランスクリプトーム解析を導入して網羅的な解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
細菌由来成分による自己免疫疾患モデルの発症および症状悪化は、ヒト自己免疫疾患の臨床像にも共通することからその機序について追究する。まず、今回LPSによって認められた脾臓におけるNox1 mRNA発現増加が他の細菌由来成分でも生じるかどうか検討する。さらに今回初めて見出した骨髄におけるNox1増加がどのような細胞群で生じているのか明らかにし、それらの細胞群を野生型およびNox1遺伝子欠損マウスより単離してトランスクリプトーム解析を行い、Nox1の役割を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたNox2遺伝子欠損マウスの導入を見送ったため、一部を次年度に持ち越すこととなった。この費用については次年度におけるNox2遺伝子欠損マウスの導入あるいはトランスクリプトーム解析に充てる予定である。研究結果を勘案して決定する。
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