小胞体蛋白質であるGTRAP3-18は、神経細胞において抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)産生や摂食・血糖調節ホルモンであるα-メラニン刺激ホルモン(α-MSH)産生を制御する蛋白質であり、海馬における記憶学習ならびに視床下部における摂食・血糖値制御に重要な役割を果たしている。本研究では、GTRAP3-18の発現を制御するmicroRNA(miR-96-5p)を標的としたantimiR-96-5pを核酸薬として用いることで、海馬GSH増加による抗酸化・神経変性抑制作用と視床下部への作用による抗肥満・高血糖改善作用を肥満・糖尿病モデルob/obマウスを用いて実験を行った。 本研究においては、3日毎に野生型およびob/obマウス(4-6週齢、オス)へantimiR-96-5pを経鼻投与し、投与開始15日後に脳組織を採取した。蛍光標識されたantimiR-96-5pは経鼻投与3日後に海馬への移行が確認されたが、その他の部位では明らかではなかった。投与期間中、経時的に摂食量、体重、および血糖値を測定したが対照マウス(生理食塩水もしくはmiRNA inhibitor control)と比較し明らかな変化は確認されなかった。HPLC法による脳組織を用いたGSH測定では、ob/obマウスは野生型マウスと比べて海馬におけるGSH量が少ない傾向がみられたが、antimiR-96-5p投与によってob/obマウスでは海馬のGSH量が増加する傾向が示唆された。また、脳組織の各部位を用いたWestern BlotではGSH合成を制御するGTRAP3-18などのタンパク質発現量の変化が示唆された。引き続き、実験結果の再現性等も含め検討中である。
|