GIRKチャネルの遺伝子変異による異常なイオン選択性は、過剰なNa+とCa2+の流入による細胞死を引き起こす。このような変異したGIRKチャネルによるイオン調節機能の障害は、Keppen-Lubinsky症候群や原発性アルドステロン症等先天性疾患の原因である。 本研究の目的は、変異したGIRKチャネルの異常なイオン選択性を是正する新規メカニズムによる作用薬の探索である。我々は、既存のWeaver変異マウスが有するGIRK2 G156S変異体のin vitro発現系での解析を重点的に行い、異常なイオン選択性のメカニズムの解明及び新規作用薬の同定を目指す。 電気生理学的解析を行った結果、GIRK2チャネルのイオン選択性フィルタ(SF)部分が変異したG156S変異体では、通常のSFの構成するK+の透過路とは別に、Na+やLi+が通過する第二のイオン透過路が新たに形成されたことがわかりました。そして、このNa+やLi+が通過する第二のイオン透過路は、SFとその背後に位置するポアヘリックスの間の空間に位置することが示唆されました。また、第二透過路の特異的阻害薬を探索するため、AMED-BINDSから化合物ライブラリーを取得して、アフリカツメガエル卵母細胞の高効率 in vitro 解析系を利用して、変異体の異常Li+電流に対する化合物の抑制効果を測定した。その結果、複数の植物性アルカロイドがLi+電流を阻害することを見出した。以上の研究成果から、チャネル病等のイオン選択性機序の理解が更新され、新規薬物によるイオン選択性調節への応用が期待される。
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