研究課題/領域番号 |
20K07306
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井田 智章 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70570406)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | システインパースルフィド / 活性イオウ / システインtRNA合成酵素 / システインパースルフィド合成酵素 |
研究実績の概要 |
システインパースルフィド(CysSSH)に代表される活性イオウ分子種は、生体内レドックスバランスを制御し、酸化ストレスに起因する様々な病態・疾患に対して防御的機能を発揮している。研究代表者らは翻訳のマスター酵素の一つであるシステインtRNA合成酵素(CARS)が、生体内で主要なCysSSH合成酵素(CPERS)として機能していることを見出した。本研究課題では、CARS/CPERSによるCysSSH合成制御機構を解明し、活性イオウ分子種・ポリスルフィド化タンパク質生成動態とその機能を明らかにすることを目的としている。 本年度は、CARS/CPERSのCysSSH合成制御の分子機構を解明するため、CysSSH合成活性中心のリジン残基周辺(KIIKモチーフ周辺)の生物種間で高く保存されたアミノ酸配列をそれぞれ変異した組換えCARS/CPERSを調製し、研究代表者らが構築したイオウメタボローム解析法を用いて、そのCysSSH合成活性やPLP結合量を解析した。その結果、KIIKモチーフ周辺の71番目のアスパラギン酸をイソロイシンに変異したD71I変異体は、野生型と比較して、非常に高いCysSSH合成活性を発揮することが見出された。さらに、CARS/CPRESの基質特異性を検討した結果、CARS/CPERSは、L-システインの光学異性体であるD-システインを基質にD-CysSSHを合成するだけでなく、グルタチオン(GSH)を基質にグルタチオンパースルフィド(GSSH)を合成することが示され、広い基質特異性を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、CARS/CPERSのアミノ酸変異体の作成に成功し、イオウメタボロームを用いて、そのCysSSH合成活性やPLP結合量を明らかにすることができた。さらに、CARS/CPRESの基質特異性を検討した結果、CARS/CPERSは、L-システインの光学異性体であるD-システインを基質にD-CysSSHを合成するだけでなく、グルタチオン(GSH)を基質にグルタチオンパースルフィド(GSSH)を合成することが示された。 一方で、大腸菌のCARS以外のアミノアシルtRNA合成酵素のCysSSH合成能を探索するなかで、新たにロイシンtRNA合成酵素が高いCysSSH合成活性を有することが見出された。
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今後の研究の推進方策 |
組換えCARS/CPERSの各基質におけるパースルフィド合成活性を速度論的解析により明らかにする。また、CARS/CPERSのCysSSH産生に伴うイオウ代謝産物の生成には不明な点が残っている。そこで、CARS/CPERSに各基質を処理し、そのパースルフィド合成に伴う関連代謝産物の生成を質量分析装置を用いて定量的に同定する。さらに、培養細胞やin vivoサンプルにおけるイオウ代謝産物のプロファイルを解析し、各種変異CARS/CPERS発現細胞やマウスにおける活性イオウ代謝物の生成動態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画以上に効率よく研究成果が得られた。さらに、研究を進める中で新たなCysSSH合成酵素としてロイシンtRNA合成酵素(LARS)が見出された。今後、CARSだけでなく、LARSのCysSSH合成機構も検討していく。
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