研究課題/領域番号 |
20K07312
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
船戸 洋佑 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (60505775)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PRL / lysosomal exocytosis / 酸性適応 |
研究実績の概要 |
本研究は細胞のpH応答、特に腫瘍内で見られる酸性環境に適応する仕組みとその医学生物学的意義を解明するものである。私たちはがん悪性化のドライバー分子として知られるPRLを高発現させた細胞では環境pHに対する応答性が変化しており、悪性がん組織で見られる弱酸性のpH環境下で最も盛んに増殖することを見つけている。2021年度はこのPRL高発現細胞を用いたゲノムワイドなスクリーニングから見つかってきた、候補遺伝子の解析を行った。各候補遺伝子に対するshRNAを安定発現する細胞を、その発現コンストラクトをレンチウィルスを用いて導入し、その後薬剤選択を行うことで樹立した。その後、PRL高発現細胞が環境pH応答性変化の結果、pH 8などの弱アルカリ性で脆弱となることを利用し、この環境下での生存率を判定した。その結果、候補遺伝子の中でそのノックダウンにより生存率が有意に回復するものがいくつか見られた。そして次にこれらのノックダウン細胞で各pHでのふるまいを調べた結果、実際にPRL発現による環境pH応答性変化を抑制していることを確認した。中でも特に有望なものについてはノックアウト細胞もCRISPR/Cas9法を用いて作成し、やはり環境pH応答性変化が抑制されることを明らかにしている。この遺伝子の産物はペルオキシソームでの代謝に寄与することが想定され、この結果より酸性環境適応と代謝との関連もまた新たに浮かび上がってきたと位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた酸性環境適応に関わる新たな関連遺伝子の同定にも成功しており、問題なく進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに各候補遺伝子の解析を進めるとともに、今回ノックアウト細胞株での解析まで進めた遺伝子についてはさらに具体的な酸性環境適応への寄与の仕組みを調べてゆくことで、新たな酸性環境適応機構がわかってくるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に行っていた候補遺伝子の解析で興味深いものが見つかり、そちらに注力したため予算の使い方に差異が生じた。またこの遺伝子については今後その動物レベルも含めた幅広い検証が必要と考えられる。より2022年度に多くの研究費を要する可能性が高く、そのことも勘案し次年度使用額を生じさせた。
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